旅のしおり:北海道

1日目

羽田 — (おじゃる) — 新千歳空港 — (快速エアポート) — 小樽 — (JR) — 余市

・ニッカ余市蒸留所

余市 — (JR) — 小樽

伊勢鮨

1日目 Tips
・快速エアポートは指定席あり。千歳から札幌が想像以上に遠い。小樽は更に遠い。
・小樽から余市はJRで2駅、440円。たった2駅と言いつつ、北海道は大きいので意外に高い。

2日目

小樽 — (JR) — 札幌 — (特急おおぞら) — 釧路

修道院訪問

釧路 16:05 — (JR釧網本線)– 釧路湿原 16:23

細岡展望台

釧路湿原 18:24 — (JR釧網本線)– 釧路 18:45

2日目 Tips
・札幌から釧路までの特急は「えきねっと」の事前予約で乗車券部分も含めて半額。やっぱり遠い。移動時間中に寝ると思えば、千歳からの飛行機よりは良いかも。
・細岡展望台からの夕陽はすばらしい。日没前後の時間帯に列車があるので、車がなくてもJRで行ける。駅に戻る道中が暗いので、懐中電灯が必要。足元注意!!
・釧路名物さんまんま。自宅に送ってしまった。

3日目

釧路駅 — 釧路市湿原展望台温根内ビジターセンター — 釧路駅

トロッコ列車で釧路―塘路間を往復

酒房 千葉

3日目 Tips
・釧路湿原は阿寒バスで移動したが、レンタカーの方が便利だと思う。釧路駅前にレンタカー店があったので、1日くらい借りても良かったかも。
・湿原展望台の遊歩道よりも、温根内ビジターセンターの木道を歩く方が釧路湿原を体感できる。と思う。
・知人に紹介された、酒房千葉。地味な小料理屋さんといった店構えだが、仕事が細かい繊細系。すばらしい。この店と湿原を求めて釧路を再訪したい。

4日目

釧路 — (特急おおぞら) — 帯広 — 帯広空港 — (おじゃる) — 羽田

4日目 Tips
・釧路から羽田の直行便が欠航になり、やむなく帯広経由で帰京。
・帯広空港で豚丼のタレを購入。

おたるのおもいで

北海道に行くのは3回目である。1回目は子供の頃にスヌーピー塗装のANAに乗るためだけに行った。記憶は全くない。2回目は青森旅行のついでに、半日ほど函館に寄っただけだ。

本格的な北海道旅行は今回が初めてと言っていいだろう。釧路が目的地ではあるのだが、一般的に北海道旅行の目的地と言えば、寿司屋と余市蒸留所ではないだろうか (たぶん)。

夏休みを1.5日取って週末と組み合わせ、トータル3.5日の旅行期間となった。釧路は移動を含めて2.5日。残る1日は北海道らしい北海道を満喫したい。

旅行時点で東京都民はGo To Travelの対象になっていなかったので、マイルで航空券を取りたかった。まずは土曜朝に千歳へ向かう飛行機を予約した。そして蒸留所見学を予約。ホテルを決める前に、寿司屋の予約をしなければならない。札幌の寿司屋にするか、小樽の寿司屋にするか。悩ましい。

大都会の札幌は高級寿司店が多いが、市内での移動が面倒くさそうだ。小樽は港町をブラブラすれば楽しめそうである。札幌に泊まるよりも、小樽に泊まる方が効率的かつ経済的であるとの結論に達した。

朝一のJALに乗って千歳、そこからJR快速の指定席を予約しておいて、小樽へ。ホテルに荷物を預け、余市蒸留所に向かった。

あちらこちらと蒸留所には行っているが、余市蒸留所は初めてである。以前は自由見学も可能だったらしいが、COVID-19の影響で完全予約制になっていた。

余市で見たかったものは、石炭焚きのポットスチルである。ツアーで蒸留棟を通った時が、ちょうど石炭をくべるタイミングだった。ラッキーである。

有料試飲コーナーと蒸留所限定ウイスキー購入も欠かせない。有料試飲は一人2杯まで、ウイスキー購入は一人3本まで。同行した母親は酒を飲まないが、幸いなことに一人カウントだった。試飲したいウイスキーが4種類、買いたいウイスキーが3種類で各2本。悩まなくて済む。母親に感謝の念を伝えたところ、こんな時くらいしか感謝しないだろうとのこと。

小樽と言われて思いつくものはルタオのチーズケーキである。せっかくなので本店に行ってみたい。しかし僕は糖尿病予備軍だった。寿司屋ではコメを大量に食べ、コメ由来の酒も大量に飲む予定である。その前にチーズケーキを摂取するのはマズいだろう。やむなくルタオ本店は断念した。

やることもないので、街へ散歩に出た。COVID-19のせいか観光客が少ない。ちょっと寂しくなってくる程である。人力車もガラス工芸店も暇そうにしていたが、どうにも観光地らしい店は苦手なのでパス。観光振興という政策に合致した行動は取れなかったが、そもそも数日の差でGo To Travel対象外なので、日本政府の政策なんてどうでもいい。

秋の気配を感じながら、釣人に紛れて夕刻の港を歩いてみる。天気が悪いせいもあるのだろうが、情景が寂しい。イメージ通りの、北の港町である。

きらびやかな札幌よりも、きれいな風鈴を売っているガラス工芸店よりも、寂しい港町が僕には似合う。と思う。それに寿司屋も美味しかった。

小樽に来てよかった。北海道らしい北海道 (たぶん) を満喫できた。

くしろのおもいで

夏休みの釧路には母親と出かけた。ちょっと前に写真をTwitterに投稿したのだが、焼鳥屋でタマネギを内側から食べる、僕のおかんである。僕自身が釧路に行く目的は釧路湿原とトロッコ列車だったが、母親は数年前から釧路に行きたがっていた。

母親は大学生の時に友人たちと釧路に行ったことがあるそうだ。いわゆる学生の貧乏旅行というやつで、ネットのない時代、だれかの伝手を頼って教会に無料で泊めてもらったそうである。そこを再訪したいとのことだった。

おかんが大学生の時と言うと、それは一昔前どころの騒ぎではない。50年以上も前の話である。調べてみたところ、釧路駅の近くにはカトリック教会があり、そのほかにも釧路市内には聖公会もあるし、日本基督教団もある。大手というか、老舗というか、50年前からありそうな教会だけでも数か所になった。もう少し絞り込む必要がある。しばらく話を聞いてみると、たぶん修道院だそうである。

さらに調べてみると、フランシスコ会の修道院が緑が丘という場所にあった。当時、謝礼の葉書を書いたのだろうか、釧路市緑が丘という地名には記憶があるそうである。50年前とはいえ、そしてキリスト教系の学校に行っていたとはいえ、うら若い女子たち (当時) がフランシスコ会の修道院に泊まれたのかは相当あやしいと思うのだが、他に決め手もない。なんとなく踏ん切りがつかなかったが、アポなしで訪問することにした。

釧路に着いてホテルに荷物を置き、緑が丘を目指す。しかしタクシーには乗らないとの仰せである。地元バス会社のサイトを見ると、修道院の近くにバス停があった。利用できそうな路線は複数あるものの、どの系統に乗れば良いのかは全く分からない。おそらくホテル近くのバス停から乗車できるはずなのだが、バス停に行って時刻表を見ても分からないままである。とりあえず来たバスの運転手さんにダメ元で聞いてみるが、そんなに上手くいく筈もない。

諦めて釧路駅前のバスターミナルまで歩いて行き、バス会社のおねいさんに聞いてみた。すぐ出るバスに乗ると、近くまで行けるらしい。待つよりも、少し歩いた方がいいとのこと。テレビ番組の蛭子さん気分でバスに乗った。

COVID-19のせいか、それとも釧路のバスの標準なのか、数人の乗客だけでバスが動き出した。バスはホテルの方向に戻りつつ市街地を抜け、それから川を渡り、丘を越えると、完全に地方都市の住宅街である。気付くとバスの乗客は我々だけになっている。

僕は蛭子能収ではない。太川陽介でもない。知らない場所でバスに乗るのは苦手である。不安な気持ちしかない。

おねいさんに指示されたバス停で下車。帰りのバス時刻を確認して、修道院まで歩く。降りた所は修道院から2つくらい手前のバス停である。

釧路の住宅地を歩きながら50年前の記憶を辿ってもらうが、まったく記憶に無いとのこと。軽く50年と言っているが、すなわち半世紀である。やむを得ないだろう。昔の釧路は田舎だったと3回くらい聞かされた後、やっと修道院に到着。

この修道院で正解なのか僕には確信が全くなかったが、安息すべき日曜日の午後であり、修道士を浮世の雑用に関わらせるのは心苦しい。あえて先方に確認することなく、50年ぶりに改めて謝礼を書き、献金と共に郵便箱に入れた。

おかん本人にも確信はないようだったが、それでも50年余りの懸案が解決したそうである。「これでいいのだ」とバカボンのパパのように思いながら、帰りのバスに乗った。

思いのほか早く釧路市街に戻ってこられた。釧路名物さんまんまを食べてから、JRに乗って釧路湿原の夕日を見に行った。雲の下から太陽が顔を出し、湿原を照らした。人間なんて小さく思えてしまうような夕景だった。

これでいいのだ。

(北海道の夏休み:前回)