れぶんとうのおもいで

北海道の緊急事態宣言のため、6月の礼文島訪問は諦めた。その時点ではマトモな決断だと思ったが、理性が欲望に敗れがちなのが僕である。

どうしても離島の美しい風景と高山植物の花々、それに礼文島名産のバフンウニが諦めきれない。

礼文島の代替として釧路へ行ったにも関わらず、毎日のように礼文島の10日間天気予報をチェックしていた。緊急事態宣言が解除された後、7月上旬の週末に晴れマークが連続していた。

なんやかんやで10年以上も行けていない礼文島である。人出の少なさを考えると、今年が最初で最後の機会かもしれない。7月上旬であれば、まだ花も残っているのではないか。諦めの悪いオッサンは少し悩んだ後、思い切って予約することにした。出発の一週間前である。

ANAポイントがあったので、それを利用して稚内までの航空券を予約。マイル使用の特典航空券ではないので、飛行機さえ空いていれば問題ない。

さらに、稚内〜礼文島のフェリー指定席も、礼文島で泊まりたかった宿も、礼文島内のレンタカーも、最終的には全て予約できた。6月に挫折した計画と大して変わらないので、あまり悩む必要はない。

乗り継ぎの関係で、帰りのルートが稚内・札幌経由になってしまった。それでも、稚内から札幌までのJR特急には割引チケットが残っており、新千歳から羽田に戻る飛行機はマイレージで特典航空券が取れた。

ちょうど会社の仕事にも余裕があり、無理をしなくても1.5日ほど休めそうだった。しかも7月に入っているので、夏休みでもある。

「島に来い」と礼文島の神様が言っているのではないか。そう思うことにした。

予約完了後、直前になって曇りが優勢な天気予報となってしまった。少なくとも雨は降らなそうなので、高山植物を見に行くのは問題ないだろう。バフンウニもシーズンに入っている筈である。ここまで来たら行くしかない。

1日目、稚内に着くと曇天だった。空港からフェリーターミナルに向かうバスで、隣席のオッサンがガイドブックを読んでおり、少々あせる。礼文島までのルートは6月計画の時点で調べておいたのだが、あまりも急な旅となったので、島自体については下調べせずに来てしまった。

幸いにも、フェリー会社作成のガイド冊子と、礼文町立・船泊小学校の生徒が作った手作りガイドを貰うことができた。これだけあれば、何とかなるはずである。

礼文島までの航海中、船上から利尻島の利尻富士が見えた。雲が出ていたが、山の頂まで辛うじて見渡せた。幸先がいいのではないだろうか。利尻島には夕方に着いた。

日の出が午前3時台と早いのだが、それでも朝焼けと日の出をチェック。しっかり曇っていた。ちょっと暗い気持ちになる。この時点の天気予報では、2日目が曇り、3日目が晴れである。

朝食の時間にあわせて起きなおし、礼文島滞在が実質的にスタート。まずはレンタカーの借り出しに向かった。相変わらず空には厚い雲が広がっている。

風景が美しい場所は後回しにして、高山植物を見に出かけた。しばらくトレッキングコースを歩いていると、霧が上がってきている。その奥には青空が見えた。

しばらく待つと晴れるのではないか。

トレッキングコースで高山植物の花々を撮影しているうちに、島の西側の海岸が見渡せるようになった。素晴らしい。

車に戻って、島をまわることにした。行きたい場所の目星は付けておいたので、昼食をパスして島を走る。僕が行きたかった所は島の西側に多くあり、概ね晴れていた。まだ新緑がまぶしく、花も残っている。素晴らしい。

一方で島の東側は午後になっても雲が多かった。島の東側海岸から利尻島が見える場所がいくつかあるのだが、利尻富士は雲の中だった。

夕方になって雲があがり、ようやく利尻富士を見渡せるようになった。素晴らしい。

欲を言えばきりがないが、非常に満足できた2日目だった。こういう夜はビールがうまい。

3日目も朝は曇りだった。昼過ぎのフェリーで帰るので、午前中いっぱい車を借りていた。この島では澄海岬が最も印象的だったので、もう一度、行ってみることにした。昨日よりは雲が多いが、この日も西側の海岸は晴れ。撮影は十分に済ませたので、心ゆくまで風景を眺めていた。やっぱり素晴らしい。

正午前にレンタカー会社へ戻って車を返却。島の東側は天気が悪くなる一方のようだが、あとは帰るだけなので問題ない。最後にフェリーターミナルで、バフンウニ丼とビールで乾杯。

帰りのフェリーは利尻島経由だった。間近で利尻富士が見えるかと期待していたが、残念ながら雲の中だった。

島の天気は予報通りというわけではなかったが、奇跡的なタイミングで島に来られた。諦めずに機会を探し、思い切って実行したのが良かったのだろう。

心残りは船泊小学校の生徒が推薦していた、昆布ソフトクリームを食べ損ねたことだけである。礼文産の利尻昆布を買ってきたので、それを噛りながらアイスを食べれば代替できるのではないだろうか。

やっぱり礼文島の神様が「島に来い」と言っていた。

旅のしおり:道東

レンタカーは便利だが、車の運転だけで移動時間が終わってしまい、ボケっと何かを考えるヒマがない。今回の旅だったら、湯沸岬〜厚岸あたりでブロクを書けた気がする。無駄な考え休むに似たり、なのだが。

1日目

羽田 (JAL) >> 釧路

温根内木道
コッタロ湿原展望台
夢ヶ丘展望台
細岡展望台

1日目Tips
・空港で車を借りて、半日かけて釧路湿原をほぼ一周。
・夢ヶ丘展望台からは釧網本線が見下ろせる。たまたま都合のいい時間帯に列車が通るので、しばらく待って撮影してみた。雄大な景色に1両の気動車。すばらしい。
・当然と言えば当然なのだが、とは湿原の色も違うし、陽の落ちる場所も違う。

2日目

硫黄山

夕食:酒房千葉

2日目Tips
・たまたま旅行サイトで見つけた硫黄山。曇天なのが残念だったが、ものすごい迫力。これが川湯温泉の源泉らしいので、次回は川湯に泊まってみるのも良いかも。
・釧路のフィッシャーマンズワーフ近くで、はぐれキツネに今年も遭遇。山に帰ってほしい気もするが、もう都会じゃないと生きていけないのかも。

3日目

湯沸岬灯台
・厚岸漁協直売所「エーウロコ
・温根内木道

釧路 (JAL) >> 羽田

3日目Tips
・湯沸岬は霧多布岬とも呼ばれる程、霧が多いらしい。僕の到着時にも霧がかかっていて悲しい気持ちになったが、しばらく散歩していたら霧が上がった。なんとも美しい海岸線である。
・厚岸は牡蠣の産地で有名。僕は牡蠣が苦手なのだが、漁協の直売所から知人に送りつけた。配達指定日に送付先へ押しかけ、3個おすそ分けしてもらったのは内緒である。よくよく考えたら、ネットで注文すれば同じことだった。かも。
・時間が少し余り、天気も良かったので、最終日も温根内木道へ。温根内は空港から近いので、車さえあれば簡単に立ち寄れる。空港周辺にはガソリンスタンドがなく、結局、ガソリンはレンタカー会社で精算になってしまったが。これでいいのだ。

くしろしつげんのおもいで

たぶん10年ほど前だったと思うが、知人に連れていってもらった寿司屋で美味しいウニを食べたところ、礼文島産バフンウニとのことだった。どうやら関係者がいるらしく、店には礼文島のポスターも貼ってあった。絶景の島に、高山植物の花々が咲いている。美しい自然と旨いウニ。礼文島に行ってみたくなった。

ちょっと調べたところ、シーズン中は非常に混んで宿泊費も高騰するらしい。数ヶ月も前から予約して、現地に行って雨だったらシャレにならない。あまり乗り気にならないまま、何年も過ぎていた。

日本国外からの観光客がおらず、国内移動にも制約がある今年は、花が咲き乱れるシーズン中に礼文島を訪問するチャンスではないか。しかも9月が有効期限のANAクーポンもある。

まずは宿を探す。さすがにガラガラというわけではないが、金曜から2泊できる日程を見つけて予約した。

行きはANAで羽田から稚内まで直行便、稚内からはフェリーで礼文島に向かう。帰りはフェリーで利尻島に渡り、JAL系のHACで利尻空港から札幌・丘珠空港へ。そして丘珠空港から新千歳空港まで移動し、新千歳から羽田に戻る。6月中旬の訪問予定として、2泊3日のスケジュールで手配した。

しかし、5月末の土曜日、携帯を見ると北海道からの着信履歴が2件。嫌な予感しかしない。コールバックしたところ、予約した宿は営業休止、フェリーは閑散期ダイヤで運航とのことだった。

今回は礼文島訪問を素直に取りやめることにした。

それでも休みを取ってしまっており、マイレージ特典航空券で行けそうな所を探す。本州以南は梅雨の時期であり、気候的には北海道が良いのだろう。知床か根室あたりに行ってみたかったのだが、施設などの休業が多くて挫折。

多少なりとも地理が分かっている場所の方が良いかもしれない。

そういえば昨秋は釧路に行ったが、釧路湿原で良かったのが温根内木道である。帰りの路線バスの時間もあり、ちょっと慌ただしい滞在になったのが心残りだった。

天気予報を眺めていると、釧路方面は悪くなさそうだった。ギリギリで釧路ゆき航空券とホテルを予約した。

これで2回目の釧路である。去年と同じことをしてもしょうがないので、今年は車を借りることにした。

僕は車の運転が嫌いなので、免許証を身分証明書としてしか使っていないオッサンである。自分で運転したのは、2016年にハワイへ行った時が最後だ。

前進と縦列駐車だけできれば何とかなるようなカリフォルニア州で免許を取ったので、基本的には前進あるのみ。日本でデフォルトになっている、バックでの駐車には非対応である。

それでも北海道の原野で小型車の運転なら何とかなると思って、レンタカーを予約した。一番レンタル料の安い軽自動車に、最高額の保険をかける。経済学の教科書に出てきた「モラルハザード」という言葉が頭をよぎる。もう正確な意味は忘れてしまったが。

釧路空港に到着し、レンタカー会社の事務所で借り出しの手続きを行った。エンジンとサイドブレーキがボタン操作なのはしっくり来なかったが、運転は慣れれば何とかなるだろう。少なくとも原野にいる限りは。

滞在中は釧路湿原のほか、川湯温泉や厚岸まで足をのばした。やっぱり車は便利である。途中、厚岸漁協の直売所で本格的な駐車場に遭遇して焦った以外、2泊3日を無事に乗り切って釧路空港に戻った。

車を返却後、空港のレストランに入って、サッポロクラシックとザンギで乾杯。ビールがうまい。