おおみや

昨年末から不眠が悪化している。入眠に問題がある上、深夜の時間帯でも心拍数が高い。せっかちな性格をしているせいか、真っ当な方法で寝ようと努力すると、かえって逆効果になるようだ。ブルーライトが入眠阻害の原因になるのは分かっているが、深夜にイライラしないためには、ネットをウロウロしながら徐々に心拍数を下げていくしかない。

去年も似たような状況に陥ったのだが、寝そびれて深夜に時間を潰していたところ、JR東日本のサイトでSL見学会の募集をしていた。いわゆる撮影会ではなく、大宮工場で検査工程を見る企画である。ほとんど組み上がった蒸気機関車D51 498の車体をクレーンで吊って、動輪と組み合わせる工程らしい。ニュース映像では見た事があるが、実際に見学できるとは思わなかった。20-70mmというワイド側に広いズームレンズを持っており、広角レンズが必要そうな工場内であれば、撮影機材の活用もできるという言い訳もある。

関門は3万円の参加費と、月曜日午後からという日程だろう。昨年の電気機関車見学は深く考えることもなく参加申し込みしていたのだが、あの時は土曜日だったので、考慮すべき事柄は参加費用だけだった。もっとも平日1日も休めないくらい多忙というわけではないし、そもそも僕がいないからと言って、勤務先の業務が止まるわけでもない。

それでも数日ほど結論を保留していたのだが、ちょうど翌月の在宅勤務予定を出すタイミングになった。改めてJR東日本のサイトを見たところ、まだ空きがあった。これはSLの神様が来いと言っているのだろう。と思う。在宅勤務予定に休暇予定を書き加え、あわせてJRへの参加申し込みを済ませた。

当日は昼過ぎに大宮へ着けば良いので、月曜日にも関わらず、起床が遅くても問題ない。入眠に問題を抱える身としては、それだけでも休んだ価値を見出せる。と思う。JRの工場へ行くのにJRが遅延するリスクを考慮するのもどうかと思うが、それでも時間に余裕をもって大宮に着いた。

受付を済ませてオリエンテーション、そして作業見学が始まった。念入りに準備してからクレーンで車体を吊り上げ、動輪が並ぶ線路の上へ移動させ、位置を調整しながら徐々に車体を降ろしていく。D型の機関車なので、大きな動輪が4組も並んでいて壮観である。職人技の世界だが、失敗できない作業を衆人環視で行うのは、プロと言えども気疲れするだろう。それでも途中で作業を止めて、撮影時間を設けてくれるサービスぶりだった。こんな作業を現実に見られるのは、最初で最後に違いない。良い機会を得られたことに感謝したい。

2時間ほどの見学時間だったが、慌ただしくもなく、間延びもせず、極めて楽しく過ごすことができた。自分の会社には金を貰っているのに嫌々ながら行っているが、他人の会社には金を払って嬉々として行っている。僕の人生、何かが間違っているのかも知れない。

大宮からの帰りは日暮里で途中下車して蕎麦屋さんに寄った。人気店で予約が取りにくく、いまや年に1~2回しか行けていないが、相変わらず美味しい。食後にバーまで寄ってしまい、月曜日とは思えないほど満足して横浜に戻ることにした。

帰りの京浜東北線で座っていたところ、蒲田を過ぎたあたりでApple Watchが鳴った。安静時脈拍が120を超えるとアラームが鳴るように設定しているのだ。函館旅行からの帰りは横浜市に入るベイブリッジ手前で鳴っただけだが、今回は神奈川県に入る多摩川手前から横浜市内の最寄駅まで、延々と鳴り続けていた。さすがに駅から歩いて帰るのは躊躇し、タクシーに乗車。しばらく自宅で安静にしても脈拍は100を超えており、すんなり眠れるわけもない。

やはり僕の人生、何かが間違っているのかも知れない。

旅のしおり:ベトナム

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

1日目

羽田 0125 (JAL079) >> ホーチミンシティー 0515
ホーチミンシティー 0745 (VetJet VJ302) >> フエ 0910

カイディン帝廟
ミンマン帝廟
ティエンムー寺院

夕食:Madam Thu Restaurant

宿泊:Saigon Morin Hotel

1日目Tips
・フエ空港ではGrabを利用できた。小さい空港のせいか乗車場所の指定はなく、アプリ上では到着出口ピックアップと表示される。しかし、どうやら空港内でのGrabピックアップは禁止されているらしい。駐車場まで行って、こっそり乗る必要がある模様。タクシーカウンターらしきものが荷物引取ターンテーブル前にあったので、そこを使うべきなのだろう。と思う。
・この日は郊外にある帝廟2ヶ所と寺院をプライベートツアーで廻った。ティエンムー寺院から市内までの戻りは、ボート利用でフォーン川クルーズと聞こえは良かったが、実態は安いバスツアーで土産物屋に連行された時のような物販だった。水上で逃げ場がないのに、いわゆる空港値段である。ビールがあれば、値段については大いに妥協の余地があったのだが、需要と供給はマッチしない

2日目

ドンバ市場
フエ王宮

夕食:Ancient Hue Garden Houses

2日目Tips
・夕食は高級ホテルに入っている宮廷料理の店に行った。セットメニューを頼むと、それらしい衣装を借りて食事ができる。気恥ずかしいので10分で終了。

3日目

An Cuu Market
アンディン宮殿

フエ 1310 (VetJet VJ305) >> ホーチミンシティー 1435

宿泊:Hotel Majestic Saigon

夕食:ANAN SAIGON

3日目Tips
・ちょっと昔の情報なのかもしれないが、ベトナムにはミシュラン星付きレストランが3軒あるらしい。そのうち2軒はハノイで、ホーチミンシティには1軒しかない。そのホーチミンシティの店で予約が取れた。ベトナム各地の地元料理にアレンジを加えて、現代風に仕上げている。斬新で美味しい。

4日目

ホーティーキー花市場
タイビン市場
トンタットダン市場

タンディン教会
中央郵便局

Bar W

ホーチミンシティー 2320 (JL070) >> 羽田 0650+

4日目Tips
・この日の午後は水上寺院に行きたかったのだが、朝の市場訪問夏バテしてしまい挫折。ホテルに荷物を預け、クーラーの効いた高島屋のベンチをベースに市内観光。喫茶店とショッピングで時間を潰した。たぶんベトナム全土のショッピングセンターの中で、この高島屋のエアコンが最高品質だろう。長居については、空港で着替えるための長袖シャツを購入したので勘弁して欲しい。
・高島屋にはユニクロも入っていたので、国産品のエアリズムを買いに行った。工場従業員の労働環境に関する展示物があったのが印象的だった。
・台東区谷中でバーをされていた方が、今はホーチミンシティに移転している。台東区時代は1回しか行った事がなかったのだが、同業バーテンダーに紹介してもらったので、帰国フライト前に行ってみた。ベトナムの雑踏から店内に入ると、日本のオーセンティックなバーそのもの。地元のフルーツでカクテルを作る難しさなど、興味深い話を聞けた。

さいごんのおもいで

ホーチミンシティ空港は乗継で何度か利用しているが、街に出たのは1回だけだ。フォーを食べに行くため、空港で荷物を預けて、中心部まで路線バスで往復した程度である。実質的な滞在時間は2時間ほどだろう。このまま乗継のために通過ばかりしていると、ホーチミンシティを食わず嫌いになる恐れがある。今回のベトナム訪問ではホーチミンシティにも1泊し、街を探検してみることにした。

昨年のハノイ滞在時にも感じたのだが、インバウンドブーム前までの日本国内ホテル相場感を引きずっているせいか、ベトナム大都市のホテル選択は難しい。もちろん安宿も多いのだが、いわゆるピンキリで、それなりのホテルは相当の価格設定である。しかも水回り設備の悪いホテルが極めて苦手なので、ホテル選びは念入りに行う必要がある。

今回のベトナム滞在にあたり、最初にホーチミンシティのホテルを探したが、土地勘が全く無いせいもあり、立地と設備と値段のバランスが分からない。延々と探した挙げ句、中心部に近い日系ホテルが、ほぼ新築で値段的にも納得がいったので予約を入れた。

その後、メインの目的地であるフエでもホテルを探したが、こちらは立地と風格だけで決めてしまった。フエのフォーン川には、パリのエッフェル塔を建設した、エッフェル事務所が設計した橋が架かっており、その橋の袂に位置するコロニアルなホテルである。しかもリバービューの部屋でも、そこまで高くはないようだ。周囲には築年数が浅い同価格帯のホテルが多くあるにも関わらず、古き良きホテルの類なのだろうと決めつけて予約。

こうなると最初にホーチミンシティでホテルを探した時の、シビアなリサーチは忘れがちになる。ホーチミンシティのホテルも、コロニアルでリバービューの方が良いような気がしてきた。

改めてサイゴン川沿いでホテルを探してみたところ「ホテルマジェスティックサイゴン」という高級ホテルがあった。豪華な歴史ある建物だ。バルコニー付きリバービューの部屋もあるが、さすがにホーチミンシティの高級ホテル相場なので高額である。

ホテルの風格は建築時の投資による影響が大だろうが、ホテルの管理は現オーナーの料金設定に影響を受ける。と思う。建物が古ければ、維持するにも更に手間がかかるだろう。フエのホテルが設備維持に対して割安で、内心では一抹の不安を覚えており、最終日の高級ホテルは悪くない選択肢と思われた。それでも冷静に考えれば、新築物件の日系ホテルが絶対的にベストな選択肢なのだろうが。

しばらく悩んだものの、やはりと言うべきか、冷静な判断には至らない。結局、ホテルマジェスティックサイゴンに予約を変更することにした。微妙にケチって当初はリバービューではない部屋で予約を入れたが、土壇場でバルコニー付きリバービューの部屋に変更。ホーチミンシティ1泊で、フエ2泊よりも高いのは都合よく忘れる事にした。ホーチミンシティでも古き良きホテルに泊まり、古き良きサイゴンを訪ねる旅をしたい。

結果的に、最初に泊まったフエのホテルは「無難」だった。恐れていた程は悪くないが、そこまで良いわけでもない。多少なりとも料金を上げてでも、もうちょっと全体的に良いと、重厚な建物が生きる気がするのだが。現実問題としては、ホテルの料金は設備維持ではなく、市場価格に影響されるのだろう。

一方でマジェスティックサイゴンは素晴らしかった。しばらくホテルの周囲の大通りが車両通行止めになっていたので、相当な政府要人が来ていたと思われるが、チェックインの為にホテルに着くと、スタッフが列をなして待ち構えていた。花束まで持っている。ついつい受け取るそぶりをしようとするが、そんな冗談は通じないだろうし、困惑させるのが目に見えている。このホテルに関しては、これが最初で最後の冷静な判断と思われる。

花束と言えば、ホーチミンシティには花市場があった。ベトナムでは市場に行くのが楽しいが、花専門の市場は初めてである。

翌朝、早起きしてGrabで花市場に向かった。やや時間的に出遅れた感はあったが、野菜ばかり見ているのとは違い、更にカラフルで美しい。その後、ビルの谷間に残る、昔ながらの市場を2か所まわってホテルに戻った。

古き良きホテルに泊まって、古き良き市場を訪ねる。現代的で混沌としたホーチミンシティには大して興味なかったが、昔ながらのサイゴンを垣間見る滞在ができた。