ごしょがけのおもいで

昨年は正月休みに酸ヶ湯へ行ったが、これは僕としては特殊なケースだった。基本的には、混雑する正月は家から出ず、1月2週目以降の空いたタイミングで代休を取って旅に出るのが良いと思っている。

2年前に秋田県の後生掛温泉へ行った際、地元の八幡平ビジターセンターがスノートレッキングのツアーをやっていることを知った。後生掛温泉の周囲には泥火山があって、夏の間は遊歩道から見学できる。かなり神秘的な風景なので、冬に見たら素晴らしいだろう。旅行には前のめりになりがちなので、1年後の冬に行こうと思っていたのだが、後生掛温泉の大浴場が工事と聞いて断念していた。

そのまま更に1年ほど前のめりな姿勢を維持して、昨年10月に予約の問い合わせを始めた。初心者向きの2時間コース、絶景満喫の3時間コースがあるらしいのだが、スノーシューを履いたことがないにも関わらず、3時間コースを選択。スノーシューからウェアまでレンタルをお願いできるので、かなり手軽に楽しめるようだ。

当然のように冬休み期間は外し、たいして悩むまでもなく1月中旬に日程を決定。温泉の予約は問題なかったのだが、スノートレッキングの方は、どうやら受付開始前にも関わらず、予約依頼メールを出してしまったようだ。1年半以上も待ったせいか、かなり前のめり過ぎる。過ぎたるは及ばざるが如し、という言葉が頭をよぎる。大丈夫だろうか。

行きは羽田から大館能代空港、大館から後生掛温泉に向かって2泊。帰りは大館の近くの鷹ノ巣から秋田内陸縦貫線に乗って角館に出て、秋田新幹線で帰る行程にした。

写真メインの旅の難しさは天気である。本来であれば、現地滞在時間を多めにとって、何度か撮影のチャンスを得たい。ただし後生掛温泉の送迎を利用すると、移動日にはトレッキング参加ができない。温泉に2泊して、中日にトレッキング参加ということになる。いくら僕が前のめりでも、天候まではコントロールできない。あとは運を天に任せるのみである。

結果的には、トレッキング前日午後が晴れ、トレッキング翌日の午前も晴れ、それにもかかわらず肝心の当日は降雪だった。冬景色は曇りでも満足できるが、雪が舞うと写真に映り込んでしまうので、ちょっと悩ましい。

安全対策という意味合いもあると思うが、当日は地元の方2名にガイドして頂いた。僕は体が異様に硬い中年男であり、安心でき、ありがたいことである。準備体操をして出発。新雪が気持ちいい。

初めてのスノーシューだったが、アイゼンが効くし、慣れると歩きやすい。坂を登ったり、坂で滑ったり。極めて楽しい。そして景色は絶景である。夏の遊歩道とは異なるルートを歩くことができるのが素晴らしい。

写真の方は、やっぱり雪が写り込んで視界が悪かった。モノゴトに前向きでも結果が伴うとは限らないのは、人生も旅行も同じである。

諦めが悪いのが取り柄でもあるので、このまま前傾姿勢を維持して、来年もう一回トライしてみよう。

旅の記録:後生掛温泉

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

1日目

羽田 0855 (ANA 719) >> 大館能代 1005

大館能代空港 (空港バス) 1020 >> 長倉町 1124

・ランチ:秋田比内や

大館駅前 1255 (バスみちのく号) >> 鹿角花輪 1353

鹿角花輪 1435 (送迎バス) >> 後生掛温泉 1520

宿泊:後生掛温泉

1日目Tips
・秋田比内やで比内鶏親子丼のランチ。ついついビール。おかみさんが素晴らしい。
・昨年の大雨の影響で、JR花輪線が大館〜鹿角花輪で不通。この区間は高速バスを利用した。

2日目

スノーシュー3時間コース

2日目Tips
・数年おきに後生掛温泉に行っているが、毎回、必ず何かが進化している。リピーターを飽きさせない工夫と言うか、収益を確保する工夫と言うか。なかなかスゴイ努力ではないだろうか。言うは易く行うは・・・という所だと思うのだ。

3日目

後生掛温泉 0930 (送迎バス) >> 鹿角花輪 1020

鹿角花輪 1032 (秋北バス) >> 大館駅 1203

秋田犬の里
・ランチ:花善

大館 1357 (つがる4 自由席) >> 鷹巣 1414
鷹巣 1438 (秋田内陸縦貫鉄道・急行) >> 角館 1635

・夜の角館武家屋敷

角館 1901 (こまち46) >> 大宮 2139

3日目Tips
・鹿角花輪から大館までの戻りは一般路線バスを利用してみた。集落を抜け、地域の大病院は全て回り、時間はかかるが面白い。
・大館駅の「鶏めし」という駅弁が大好きなのだが、その駅弁屋さんがレストランをやっている。いつもは弁当なので冷たいのだが、できたての鶏めしが暖かくて感動。お米も柔らかい。
・鷹巣からの秋田内陸線は進行方向右側に座りたかったので、大館からJR特急でワープ。阿仁川の雪景色を眺めながらワンカップ。たまりませんな。

旅のしおり:ペナン

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

1日目

Singapore 1145 (AirAsia AK1720) >> Penang 1300

宿泊: The Blue Mansion

Dinner:Indigo at The Blue Mansion

1日目Tips
・1泊目はブルーマンションという古い豪邸に宿泊。夜景が特に美しい。建物自体は一般公開されているが、客室エリアには宿泊者しか入れない。客室前の廊下に椅子があって、そこで寛げるのが、宿泊者の特典である。中庭に面した外廊下なので風通しが良く、美しい建物を眺めながら酒を飲んでいると、実に良い気分だ。

2日目

宿泊:Eastern & Oriental Hotel

Dinner: Kebaya Dining Room

2日目Tips
・この日はホテルを移動して、シンガポールのラッフルズホテルを建てたサーキーズ兄弟によるEastern & Oriental Hotelに宿泊。
・Eastern & Oriental Hotelは改装によってバーの場所が変わっていた。バー自体は前より渋くて良いのだが、相変わらず巨大テレビがあるのがどうかと思う。オーセンティックなバーにテレビは不要である。と思う。天気が悪くて出歩く気にならず、文句を言いながらもバーには3回も行ったのだが。

3日目

Penang 1005 (Scoot TR427) >> Singapore 1140

3日目Tips
・シンガポールに戻った後、サーキーズ兄弟もう1軒のホテルにも行ってみようと思い、数年ぶりにRaffles HotelWriters Barへ。近年ここのバーも改修されていた。宿泊者エリアとの微妙な境界上に有ったパブリックスペースが良かったのだが、隔離されたバーエリアになっていた。改修と同時にネット予約できるようになったのは評価できるが、早い時間に行ったせいか、スタンダードなカクテルでもレシピを見ながら作るバーテンダーばかりだったのはどうかと思う。

ぺなんのおもいで

約3年前のCOVID-19発生時、諸々の手配が終了していた旅行先の一つがマレーシアのペナンである。ペナンには、シンガポールのラッフルズホテルを建てたサーキーズ兄弟が手掛けた、Eastern & Oriental Hotelがある。そこの改装工事が終わったと聞いていたので、ちょっと行ってみようと思ったのだ。

ペナンは1~3月あたりが乾季なので、2020年2月末の予定で旅行を仕込んでおいた。しかし、その頃には非公式ながら勤務先から海外渡航自粛の要請が出ていたし、各国の入国制限が始まるかどうかというタイミングで、需要減に対応してフライトも徐々にキャンセルされ始めていた。

勤務先を欺いた上で、かなりスケジュール的に無理をすれば行けたと思うのだが、雇用を維持したいサラリーマンの弾丸旅行としてはリスクが高すぎてキャンセルした。会社を適当にサボるくらいでは傷まない良心をしているが、当時は全てが不透明すぎた。金融工学には詳しくないが、ヘッジできないリスクは回避するに限る。

この時はシンガポールからAirAsiaでペナンに行き、シンガポール航空で戻る予定だった。結果的には往復とも欠航。無理をしてまでペナンに行く気はなくなっていたので、シンガポール航空は再予約をせずに返金を依頼。しかしAirAsiaは運賃に充当可能なクレジットしか戻してくれなかった。

不透明な情勢の中、日本の国内線を運航していないAirAsiaのクレジットを持ってもどうかなと思っていたのだが、クレジットは何度も使用期限が延長され、ひとまず2022年末まで有効のようだった。昨年秋の時点でアセアン域内の旅行規制は大幅に緩和されており、2023年以降のクレジット再延長があるか分からないし、もっと分からないのがCOVID-19の流行状況である。

遊べる時に遊んでおくというのが人生唯一のストラテジーなので、早々に残存クレジットを使うべく、昨年の海外旅行復活後に再びペナン行きを仕込んだ。5月~10月がペナンの雨季だが、特に8月下旬~10月に雨が多いらしい。ギリギリという所で8月上旬に予定を入れた。この時のペナンまでの往路はAirAsia、シンガポールへの復路はScootで予約を入れた。ちなみに2020年当時、何件も航空券をキャンセルしたが、現金で返金のあったLCCはScootだけである。返金の恩は搭乗で返したい。

しかし昨年7月末には僕自身がCOVID-19に感染してしまった。指折り数えると、タイミングとしては出発前日までに完治している (というよりも、日数的に完治したと見なされる) 筈だった。そうは言うものの、マレーシア入国前7日以内に風邪症状があったかとか (その時点で咳が少し残っていた)、日本帰国前14日以内にCOVID-19患者と接触があったかとか (当該期間中に患者本人だった)、各国の検疫上の質問にはマトモに答えられそうにない状況である。

この時点での旅行規制緩和は例外的な措置であり、政策の根本として疑わしきは隔離だろうから、雇用を維持したいサラリーマンの弾丸旅行としてはリスクが高すぎ、旅行をキャンセルすることにした。会社を適当にサボるくらいでは傷まない良心を持ってはいるものの、バカ正直に問い合わせるには野暮すぎるし、問い合わせずに日本を出国するには不透明すぎた。金融工学には詳しくないが、ヘッジできないリスクは回避するに限る。

この時はAirAsiaがフレキシブルな予約期間としていたようである。同社にしては珍しいと思うのだが、一番安いチケットを自己都合でキャンセルしたにも関わらず、またまた運賃に充当可能なクレジットが戻ってきた。

本格的に寝込んでいた最初の3日間を除くと、僕のCOVID-19感染期間中は概ねヒマだった。特に療養期間後半は時間を持て余しており、全ての予約をキャンセルした後、AirAsiaのクレジットを利用して、改めてペナン旅行を手配することにした。ここまで来ると、手段が目的化してしまう、ありがちなパターンである。

そこで雨季が終わったと思われる11月上旬に予約を取り直した。同じ計画を2回も焼き直しても面白くないので、Eastern & Oriental Hotelの他に、ブルーマンションという19世紀の豪邸だった建物にも1泊することにした。今回もAirAsiaでペナンに行き、シンガポールまでの復路はScootで予約を入れた。

こんなグダグダを3度目の正直と言って良いのかは不明であるが、11月には予定通りペナンに行くことができた。Eastern & Oriental Hotelとブルーマンションは満喫できたが、残念ながら雨季は終わっておらず、天気は概ね悪かった。

2度目のキャンセルの後、手段が目的化してしまい、AirAsiaに乗ってペナンに行くこと自体が旅の目的になってしまったのである。目的を達した以上、滞在中の天気は妥協せざるを得ないが、もうちょっと街歩きが出来れば良かった。

あれから3年が経ってCOVID-19情勢の不透明さは概ね消失し、良心の強靭さ、もしくは金融工学の知見に関わらず、リスクはヘッジできるようになった。綿密な計画さえあれば、サラリーマンの弾丸旅行も雇用維持のリスクなく行ける。

そして、もう一度、ペナンに行ってみたいと思う。次回は旅行に行くこと自体を目的化せず、計画的に好天を狙って乾季に訪問したい。その時はクレジットに縛られず、AirAsiaを計画的に利用しよう。