2011/05/03 さいはて

タヒチから戻って約一ヶ月になる。この間、僕はろくな生活を送っていなかった。毎日14時ころに起き、食事の後に昼寝。なんとなく夕方から起きだして、20時くらいに夕食を食べたら、22時くらいにバーに行く。それからネットを始めると、寝るのは4時過ぎである。いくら休職中といえども、この生活はよくないだろう。医者からは規則正しい生活を送れと言われているが、毎日午後に起きることを医学的に規則正しい生活とは言わないはずである。

とはいえ、やることはない。本当は4月中旬から復職する予定だったが、それも延期になってしまった。やることがなければ旅をすればいい。旅に出れば観光をしなくてはいけないから昼寝三昧の生活とはいかないだろうし、旅行に出かけてまでネット三昧ともいかないはずである。もっとも年始以来の旅のしすぎで金はないが、こういうときこそ親に頭を下げるときである。

借金の目処がついたところで、どこに行くかを考えた。前々から気になっていたのだが、ノルウェー北部を結ぶ定期航路があるらしい。沿岸急行船と呼ばれる航路で、生活物資の輸送のほか、クルーズ船のようにもなっており、オーロラの出る冬場と短い夏が観光のピークシーズンのようである。

ノルウェー北部といえば、北極圏ギリギリの場所である。最果ての地といっていい。多分さむいところなんだろう。そんなところで真冬にオーロラを見るのは嫌だが、一方で最果ての地ならば冬っぽい時期が似合う。今こそがイメージに近い時期ではないだろうか。

予定を立てるのは早いが、旅に出るのも早い。オスロで乗り継ぎのために一泊、そこから国内線でキルケネスという街に着いた。ロシア国境にも近い、ノルウェーの北のはずれの街だ。寒い。夕方からは小雪が舞い始めた。ここで更に一泊してから沿岸急行船に乗る。

2011/04/04 たひちのおもいで

土曜日にタヒチから帰ってきた。原発の影響で往復共にグアム経由 (給油とクルー交代) となり、ただでさえ遠いタヒチが更に遠かった。片道約14時間。文字通り座りっぱなしである。

とはいえ、今回の旅は、行くべくして行った旅と言っていい。
1. 地震の前日には予約と入金が終わっていた (タヒチはキャンセル料も高い)。
2. 地震の翌日に予定通り視力回復手術が受けられた (術後1週間目に検診に行かないといけないので、手術日が変わると出発できなかった)。
3. 行きの飛行機が予定日に飛んだ (3月末まで2便に1便は欠航していたから、スケジュール上で週2便でも、実質週1便だった)。

タヒチにはビーチと海があるが、それ以上のモノはない。とくに観光するような場所もないので、基本的には、朝食 >> 昼寝 >> 昼食 >> 散歩、水泳 >> 夕食 >> 睡眠という生活を送っていた。健全で理想的なバカンスと言っていい。

日本にいたとすると、昼食 >> 昼寝 >> 夕食 >> 睡眠となる。アル中養成生活と言っていいだろう。

言葉にすると随分と違うようだが、どちらも非生産的だから大差はない。

2011/03/29 おもいこみ

人生、予想と違う結果に驚くことは多い。結婚してみたら不幸せだったとか。

たしかに人生は結果的に予想と異なる方向に進んでしまうこともあるが、想定と本質が違っていることも多い。

世の中は結婚することは幸せであるという前提に成り立っている。しかし、それが必ずしも本質ではないことは多くの例証が物語っていることである。現状維持も地獄だが、手放すのは更に地獄という、銀座のビルのような様相を呈することも多い。

タヒチも誤った前提のもとに訪れた島だった。チケット購入から出発まで二週間。そのなかでのタヒチのイメージは「南半球にある温暖な島」ということだった。今年の冬は寒かったから、「温暖」は歓迎すべきキーワードである。この、大体において歓迎すべき雰囲気こそ、結婚の想定と本質に関する大いなる誤解に極めて近い。

タヒチ到着前、飛行機からはライトブルーの海が見えた。現実とは思えないような色の海である。まさに楽園だと思った。

しかし、飛行機が空港に到着してタラップに出ると、そこには現実があった。暖かいというよりは、むしろ熱気である。汗ばむ陽気。まさに夏である。この時期に南半球の温暖な場所に行くということは、夏の中でも特に暑い場所に行くことである。そして僕は暑いのは嫌いなのだ。理想と現実の違いを思い知らされた気がした。たぶん結婚して半月くらいすると、こういう気分になるのだろう。

幸か不幸かタヒチには厳格なドレスコードはない。空港を一歩出ると、短パン裸足のオッサンとか、薄着のおねいさんとかがウヨウヨしている。毛むくじゃらの足とか、余分な肉を露出することに抵抗のない文化らしい。僕も赤いアロハシャツと短いズボンに着替え、サンダルを履いてみた。

そうこうしていると、それなりに快適になってきた。ホテルにはエアコンもある。海に近いから風もある。翌日には暑さは気にならないほどだ。現実にあわせて生きていく術を身につけたようである。

結婚とタヒチは似ている。しかし、タヒチは本質的に善と言えるが、結婚の本質は誰にも分からない。