ざおうのおもいで

このブログの読者に蔵王在住の方がおり、蔵王を訪問してみないかと勧められていた。蔵王は温泉とスキーの町だが、最も有名なのは樹氷だろう。せっかく行くのであれば、樹氷を見てみたい。

樹氷は真冬の2月がベストシーズンらしい。第二の選択肢として、1月中旬か3月中旬か伺ったところ、1月中旬の方が良いだろうとのこと。

そこで正月休みの代休で蔵王に行くことにした。初日は蔵王の温泉宿に泊まり、2日目は肘折温泉へ。

蔵王の樹氷と言えば、雪が付着して白いモンスターのようになった木々が、快晴の青空に映える写真が有名である。山の天気は変わりやすいが、そんなに上手くいくものなのだろうか。

今回は旅程をフレキシブルに変更できるJRを利用した。初日の朝イチ下り新幹線、3日目の上り終電を予約して最大限の滞在時間を確保しておき、天候にあわせて予約を変更する。他の予定を入れなかったので、移動を考慮しても、樹氷を見るチャンスは3回ある。

3日間あれば、1回くらい上手くいく筈である。たぶん。

しかし、週間予報は、かなり厳しい。極めてフレキシブルな予定だったが、日程そのものは変えられない。出発前日の時点で、初日の夕方に数時間の晴れ間があるだけ。あとは完全な曇り予報だ。旅行期間中ずっと天気が悪ければ、フレキシブルな行程である意味はない。

本当に上手くいくものだろうか。

初日は早起きせず、昼前に東京を出発する山形新幹線に乗車。除雪作業に時間を要したとかで、新幹線は遅れていた。昨夜の山形は天気が悪かったのだろうか。あまり幸先がいいとは言えない。

快晴の関東平野を抜けると、福島県は文字通りの曇天である。山形県に入ると更に悪化し、場所によっては雪が舞っている。

それでも山形駅に着く頃になると、風で流れる雲の奥に、太陽が見えた。気がした。

明るい兆しだろうか。

山形駅からバスで蔵王に向かう。山間部に入って、標高が上がるにつれて再び視界が悪くなった。

この日はダメだと思った。温泉街をブラブラして昼寝でもしよう。

ところが16時頃に空を見上げると、なんと急激に晴れ始めている。やっぱり山の天気は変わりやすい。

あわててロープウェイ乗り場へ。ところどころ消雪されている道路を小走りで駆け抜け、ロープウェイに出発ギリギリで飛び乗った。途中のゴンドラ乗り換えも最速で済ませ、なんとか日没前までに頂上へ到着できた。

白いスノーモンスター、青い空、そこに真っ赤な夕陽が加わっている。現実とは思えない絶景だった。日没前後の時間帯をマジックアワーと言ったりするが、マジックを超越して、神秘的である。なんとも素晴らしいが、なんとも寒い。極寒もまた、神秘であり、現実である。

周囲が完全に暗くなった頃に撮影を切り上げ、夕食時間までに宿へ駆け戻る。

完璧な2時間だった。宿で祝杯をあげる。山形県川西町の「住吉」という日本酒を注文した。樽香が特徴の辛口。うまい。さらに地酒を追加した筈だが、そちらは記憶にない。山形の酒で杯を重ねて酔っ払い。

初日で旅の目的は達してしまい、あとは温泉に入るだけのダラダラ旅。

最終日、新幹線車内から見る山形市内は悪くない天気だった。しかし新幹線を降りて、バスで蔵王に向かい、 防寒具を取り出して再びロープウェイに乗るのは想像できない。

山の天気は変わりやすいのだ。蔵王まで行って晴れている保証はないし、昼の好天が夕方まで続く保証もない。ゆえに初日より素晴らしい景色に遭遇できる可能性は極めて低い。自然の織りなす絶景の記憶は、絶景のままが良い。

そんなのは言い訳である。

もう満足しきってしまった。初日の夕方は冷えすぎたし、その後は温泉に入りすぎて疲れた。新幹線指定券の再変更も必要である。もう極寒の山上まで行く気力がないのだ。

ダメオッサン。高鼾で昼寝をしながら、早々に家に帰った。

旅の記録:蔵王

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

1日目

東京 1000 (つばさ135) >> 山形 1344
山形駅前 1420 (バス) >> 蔵王温泉バスターミナル 1457

ロープウェイで樹氷を見に行く

宿泊:深山荘高見屋

1日目Tips
・まったく蔵王を分かっていないで宿を予約したので、古い温泉街では最もロープウェイから遠い宿をとってしまった。それでも徒歩15分くらいだけど、アップダウンもあり、雪に慣れていない関東人には辛い。
・樹氷のライトアップを見に来るらしく、18時頃の上りロープウェイは団体客で混んでいた。日没後のライトアップであれば、吹雪でもない限り、天候に左右されずに楽しめそうだ。

2日目

蔵王温泉バスターミナル 1020 (バス) >> 山形駅前 1105
山形 1246 (つばさ133) >> 新庄 1331

宿泊:肘折温泉 丸屋

2日目tips
・僕が泊まった宿では送迎してくれたが、新庄駅から肘折温泉までは村営バスも利用可能。

3日目

新庄 1117 (つばさ140) >> 大宮 1423
大宮 (JR) >> 横浜

3日目tips
・馬鹿の一つ覚えのように、大宮で新幹線を降りて、普通列車グリーン車で確実に座って横浜まで戻る。20分くらいロスしている模様。そもそも大宮からなら普通車でも座って帰れるのではないかという疑いを抱きつつあり。

すかゆのおもいで

年末年始は積極的に働いて、まとめて1月下旬に代休を取ることにしている。そうは言っても、今どき外国に弾丸旅行できる筈もなく、どうしたものかと思っていた。

消極的労働に徹すると、今シーズンは12/31からの5連休になりそうな塩梅だった。さすがに家でゴロゴロしているには長すぎる。

何度か秋田の後生掛温泉に行っていたが、北東北の温泉で気になっていたのが、黄金崎不老ふ死温泉酸ヶ湯温泉である。

昨年、黄金崎不老ふ死温泉には行けた。幸運にも夕陽の沈む日本海の絶景を楽しめた。

そして酸ヶ湯温泉にも行きたいと思っていた。東北の温泉に行くベストシーズンは冬だと思っており、タイミングを見計らう必要がある。

11月末になって年末年始予定のアテをつけ、旅行先の検討を始めた。どうせ酸ヶ湯温泉は満室だと思っていたが、たまたまチェックしたタイミングで、1月2日から2泊の日程で1部屋だけ空きがあった。しかも腰痛オッサンに最適なベットの部屋である。

これは行くしかないだろう。往復の新幹線も発売開始日に予約が取れた。

しかし12月中旬になると、1月4日に仕事があることが判明した。在宅勤務ではあるが、さすがに新幹線乗車中に仕事をする気にはならない。青森の山奥まで行って1泊しかできないが、それでも行くべきだろうか。そもそも世間的に1月3日は帰省からの戻りのピークである。帰ってこられるのか?

悩みつつJR東日本サイトで調べると、奇跡的に1月3日の上り新幹線に1本だけ空席があった。ちょうど増発が決まった直後だったようだ。

とりあえず宿と新幹線の予約を変更。

その後も年末までグチグチと悩むが、これだけタイミングよく物事が決まることも珍しい。やっぱり行くことにした。

青森駅からは宿の送迎バスがあるのだが、行きは新青森駅からのJR路線バスに乗ることにした。1時間くらい早めに着いて、ブラブラできる。

このバスが素晴らしかった。観光バス仕様の車両でゆっくりできるし、景色のいいところで、少し減速もしてくれる。

酸ヶ湯温泉は千人風呂という大浴場が有名なせいか、混んでいるイメージしかない。宿が満室だったので覚悟して行ったが、COVID-19時代で宿泊者数を制限しているのか、温泉の利用者は少なめ。そもそも「江戸八百八町」と同じようなもので、「千人風呂」といっても「大きい」という意味なのだろう。

深夜、たまに屋根から雪が落ちる音を聞きながら、ほぼ無人の大浴場につかっていると、実に良い。そのまま一晩中、入っていたい気分である。大浴場には神棚があって、全裸で初詣。

奇跡的なタイミングを活かし、素晴らしい新年になった。

旅のしおり:酸ヶ湯

単純往復。記載の時刻は訪問時のダイヤです。

1日目

東京 0936 (はやぶさ13) >> 新青森 1234
新青森 1245 (JRバス) >> 酸ヶ湯 1405

宿泊:酸ヶ湯温泉

2日目

酸ヶ湯 0850 (送迎バス)>> 青森駅 0950頃
青森 1039 (JR) >> 新青森 1044
新青森 1104 (はやぶさ306) >> 大宮 1348
大宮 (JR) >> 横浜

さんいんのおもいで

昨秋にはCOVID-19の流行が一段落つき、国内移動が増えてきた。観光地も週末を中心に混み始め、人混みの苦手な僕は穴場を探して旅に出る必要がある。

イメージ的に穴場は北海道や東北に多くありそうだが、11月は雪景色には早すぎる。寒い場所へは冬に行くのが良いと思っているので、別の地域で穴場を見つけるしかない。

そもそも穴場と言うのは、自分は知っているのに、一般的には知られていないスポットのことだろう。僕が知らない地域だと、穴場か否かの区別がつかない。僕が知らないことは世間も知らないと思い込むか、もしくは人出の少なさに着目するかして、そのエリア全体を穴場だと捉えるしかない。

僕にとって、西日本の日本海側は全く馴染みがない。福井あたりから怪しくなるが、それでも兵庫までは何となく分かる。しかし鳥取と島根は位置関係すら分からない。こうなったら山陰地方全体を穴場と考えても良いのではないだろうか。

これを機会に山陰へ行ってみることにした。穴場だと思ったのが正解なのか、特典航空券の空席は取りやすかった。往路はJALの出雲便を予約。

帰りは少し悩ましい。米子空港は出雲市から近すぎ、萩・石見空港は不便すぎる。山陰からは外れてしまうが、太平洋側に出て宇部空港を利用することにした。宇部からはANA (スターフライヤー運航) に空席があり、島根から山口に向かう旅となった。

山陰の温泉地と言うと、玉造温泉が王道なのだろう。いくら山陰地方を穴場だと思ったとしても、玉造温泉を穴場と呼ぶには無理がある。しばらく探してみたところ、出雲市の西に「温泉津温泉」を見つけ、山口県・長門市の西に「油谷湾温泉」を見つけた。これらは穴場に違いない。

温泉津温泉と油谷湾温泉の間は山陰本線で移動。簡単に考えていたのだが、移動時間が異様に長くなった。山陰本線には特急が運行されているのだが、タイミングの良い特急列車はない。穴場の温泉地に行くせいか、うまく特急を利用できないのである。結果的に全て各駅停車で、約5時間の長旅になってしまう。もうオッサンなのだが、腰は大丈夫だろうか。

まずは朝一番のJALに乗って出雲市に向かった。出雲空港から直行バス出雲大社へ向かう。出雲大社に脇目もふらず向かう独身オッサンと聞くと、ちょっと切羽つまりすぎというか、鬼気せまるものがあるが、そんなわけではない。出雲大社は山陰のメジャーな観光地である。バスも老若男女とりまぜて満員だったし。

早々に出雲大社へ向かった理由は、出雲大社のバスターミナルから別のバスに乗り、日御碕神社に行きたかったからだ。日に数本しかバスがない、穴場の神社である。日の沈む地の神様とのこと。自称ハードボイルド系の僕には似合うと思う。

2日目は普通列車の移動でつぶれたが、のんびりと日本海を眺めつつ、西に向かう。途中で適度に乗り換えがあり、思いのほか楽である。列車3本に乗ったが、1本だけが小型車両2両編成で、あとは国鉄仕様の普通車両1両での運行。いずれにしても混んでいない。やっぱり穴場だ。

最終日は山口県で一日を過ごす。日本海側の観光地だと、長門市からは東に戻る形になるが、萩が有名だろう。もしくは山陰本線で更に西へ向かい、下関を経由して、ぐるっと宇部まで行ってもいい。

天気が良かったので、秋吉台秋芳洞に行く事にした。ちょうど秋吉台は草紅葉の時期である。有名な観光地だが、せっかくなので行ってみたい。

観光ついでの散歩のつもりが、かなりのトレッキングになってしまった。しかし美しい秋の一日を過ごせた。月曜日だったせいもあり、秋芳洞も人出が少なく、ゆっくりと見物して撮影。

リサーチによって玉造温泉はパスしたが、結局、出雲大社といい、秋吉台・秋芳洞といい、有名観光地は外せない。それでも行程全体としては人混みを回避し、ゆっくりと旅ができた。

やっぱり山陰地方は穴場ではないだろうか。