いねのおもいで

人生そうそう上手くいくわけはない。と思う。蔵王北海道と好天が続いたので、天気が悪くても諦めのつく旅行先を探していた。大自然ではなく、街並みを眺めるのが良いだろう。友達オッサンが京都府北部の伊根という漁村を絶賛していたので、行ってみることにした。

伊根は海沿いに舟屋と呼ばれる家々が連なる街並みが有名で、その舟屋に泊まることができるとのこと。舟屋は漁師さんの家なので、一軒ずつ経営が異なる。横断的に空室を見つけられないのが面倒ではあるが、観光協会のサイトを起点に空室を探した。

入り江の奥まった場所にあって、しかもベッドのある宿に空室を見付けた。街の中心部からは離れていたけど、小さい街と聞いていたので、大して気にすることもなく予約。

雨でも諦めがつく前提で旅の計画を立てたが、やっぱり天気は気になってしまう。結局、毎日のように週間予報をチェック。

新横浜から東海道新幹線で旅に出た。京都で山陰線の特急に乗り換え、そのまま京都丹後鉄道の宮津まで。宮津からバスに乗り換えて更に1時間、伊根に向かった。かなり遠い。

それでも横浜を早朝に出たおかげで早目に到着し、昼食がてら伊根の街をブラブラする。

チェックイン可能な時間になり、歩いて宿に向かった。それにしても宿が遠い。たしかに小さな街ではあるが、伊根湾の海岸線に沿って街が作られており、妙に細長い。日本海からの風が当たらないところに集落を作ったそうで、建物がない一角もあったりして更に遠く感じる。結局、街の中心部から片道2キロほどだった。

こうなると切実な問題は夕食だろう。舟屋は一軒貸しが基本なせいか、いわゆる素泊まりが多いようだ。僕が泊まった所も同じで、レストランに予約を入れてもらっていたのだが、徒歩で片道25分ほど。サバイバルキャンプに来たわけでもないのに、食事の為に往復で約1時間も歩かなければならない。この日が雨だったらと思うと、恐怖でしかない。

一方、宿そのものは素晴らしい。湾曲した入り江になっている地形のおかげで、大きな窓からは舟屋の街並みを楽しめる。のんべんだらりと座って街を眺める。窓からの景色は伊根でもトップレベルではないだろうか。

素晴らしい景色を満喫できたが、バス利用者にはハードルの高い宿だった。街並みを眺めるだけなら雨でも諦めがつくと思っていたが、雨天だったら別の意味で後悔が残っただろう。人生そこそこ上手く行っているようだ。

何も知らないが故に選べた良い宿だったが、何も知らないが故に選んでしまった宿でもある。その気になれば何でも調べられる時代だが、知らないというのも力である。

旅の記録:伊根

記載の時刻は訪問時のダイヤです。

1日目

新横浜 0627 (のぞみ273) >> 京都 0821
京都 0838 (はしだて1) >> 宮津 1033
宮津 1047 (バス) >> 伊根 1157

海上タクシーで伊根湾めぐり
舟屋見学

宿泊:舟屋の宿まるいち

夕食:舟屋日和 海宮

1日目Tips
・伊根にはコンビニがないと聞いてはいたが、商店も少ない。唯一と思われる (?) 酒屋は閉まっていた。ビールの調達に失敗。

2日目

伊根郵便局前 1030 (バス) >> 天橋立元伊勢籠神社 1105

・天橋立を歩いてみたが、松林の海岸を歩いているだけである。地上からだと日本三景な感じはない。
・天橋立の智恩寺山門前で「知恵の餅」を食べた。軒先に座って山門を見ながら餅を食べていると、ちょっと賢くなった気がする。
天橋立ビューランドから天橋立を見る。上から見れば確かに日本三景である。

天橋立 1347 (はしだて 4) >> 福知山 1433
福知山 1443 (こうのとり18) >> 新大阪 1628
新大阪 1651 (のぞみ416) >> 新横浜 1902

2日目Tips
・COVID-19による旅客減少の影響で、はしだて4号は福知山〜京都間が運休だった。なにも考えずにチケットを取ったところ、宝塚・大阪を回るルートになった。兵庫県と大阪府を通るので、30分くらい遠回り。当然、料金は高い。
・結果的に新大阪駅で蓬莱の豚まんを買えた。京都駅伊勢丹デパ地下の老舗料亭おばんざい弁当を逃したとも言えるが。

旅のしおり:流氷

記載の時刻は訪問時のダイヤです。

1日目

羽田 (ANA375) 1035 >> 紋別 1220
紋別空港 (無料バス) 1235 >> 海洋交流館・ガリンコ乗場 1243

・1330 ガリンコ号
オホーツクタワー
アザラシ餌やり
・1615 ガリンコ号サンセット

ガリンコ乗場 1800 (バス) >> 紋別バスターミナル 1815

宿泊:ホテルオホーツクパレス

夕食:海鮮遊食Rin

1日目Tips
・ガリンコ号のダイヤにあわせて、紋別市内と船着場を結ぶバスが運行されているので便利。
・2日目も含め、時間帯を変えて3回もガリンコ号に乗った。これではガリガリ君である。やり過ぎかと思ったが、4回乗船という強者も見かけた。
・混んでいなかったので、アザラシ餌やりに参加。芸をしたアザラシにホッケをあげると、スルッと飲み込むのである。この夜、ホッケを食べたが、僕はビール付きである。

2日目

紋別バスターミナル 0515 (バス) >> ガリンコ乗場 0530

・0600 ガリンコ号サンライズ

ガリンコ乗場 0720 (バス) >> 紋別バスターミナル 0735

朝食:出塚水産

オホーツクパレスホテル 0950 (ひがし北海道エクスプレス) >> 網走おーろらターミナル 1245

・1400 >> 1230 オーロラ号
流氷硝子館

夕食:中鮨

網走バスターミナル (空港バス) >> 女満別空港
女満別 1905 (ANA 4780/AirDo) >> 羽田 2100

2日目Tips
・朝食は紋別港にある出塚水産で揚げたて蒲鉾を買い食い。散歩がてら丁度いい。朝ビールの欲望に耐えた。エライ。
・バスが網走に早く着いたので、なりゆきで予約よりも1便前のオーロラ号に変更。
・オーロラ号からはオジロワシを見る事ができた。船の音で逃げてしまうのだが、なんとか望遠レンズなしで間にあった。
・時間が余ったので、砕氷船の中から見つけた流氷硝子館へ。ちょっと感じのいいガラス工芸品と、ちょっと感じのいいカフェ。喫茶店に行くのは年に数回、馬鹿の一つ覚えのようにエスプレッソしか頼まないオッサンには似合わない。
・僕の勘違いにより店を早めに開けて頂いて、網走バスターミナルに近い「中鮨」という寿司屋さんへ。ありがたいが申し訳ない。関東にはない寿司ネタがあって面白い。
・ANAマイレージを使い、AirDo運航便に初めて搭乗。昨年のStarFlyerと同じパターン。ウイングレットがカワイイが、エコノミー席はエコノミー席である。

砕氷船の記憶

流氷を見に行く砕氷船は紋別と網走にあり (羅臼にもあるらしいが、公共交通だとアクセスが悪そうでパス)、どちらが良いのかは悩ましい。

今回は紋別をメインにした。

地理的に北側にある紋別のほうがアムール川に近そうで、流氷遭遇率は高そうな気がするが、網走の方が東に張り出している。風向などの要素もあるので、どちらが良いとは一概には言えないのではないだろうか。どこかで見かけたデータによると、網走のほうが陸上からの流氷観測数は多いとか (?)

今回は体感的には大差なかった。どちらも1時間程度の航海で、沖合の流氷帯まで片道15〜20分の航海が必要。ゆえに流氷の中をウロウロするのは20分ちょっと。

事象としては海の中に氷塊があるだけである。それだけなら紋別も網走も大差ない。筈である。網走は晴れると知床まで見渡せるので、晴れた日なら網走が良いだろう。オジロワシも見られたし。

夕方のサンセット・クルーズは紋別、網走どちらにもあるが、早朝のサンライズ・クルーズは紋別のみだった。太陽は東から昇るので、オホーツク海沿岸ではサンライズの方がドラマチックだ。と思う。

紋別の方が船は小型で乗客も少なく、じっくり楽しめる気がする。僕には網走の船は大きすぎというか、乗客が多すぎた。

どちらにしても沿岸近くまで流氷が来ていることに加えて、天気が良いことが条件になる。今年はCOVID-19の影響で航空券を無料キャンセルでき、直前に変更したフライトにも空席があった (羽田〜紋別線は毎日1往復しかない。そもそも紋別空港自体が1日に1往復しかないのだ)。紋別のホテルにも空きがあった。

通常であれば、そういうわけにはいかないだろう。当日の天気が悪くても諦める覚悟で航空券を取る必要があると思われる。そこまで考えると、飲食店や観光施設が多い網走の方が無難かもしれない。

結局、悩ましいままである。

りゅうひょうのおもいで

昨年は人出の少ない超有名観光地を訪問したが、流氷を見に行く事は挫折した。そもそも思いついたのが遅かったせいもあるのだが、どこに行けば良いのかも分かっていなかった。

ちょっと調べてみたところ、流氷が見られるのは、紋別、網走、知床らしい。有名なのは紋別「ガリンコ号」と網走「オーロラ号」。どちらも砕氷船だが、ガリンコ号は船首にドリルがついていたりと、船の構造が違うらしい。

あれこれ考えているうち、昨冬は機会を逃してしまった。その後、夏まえに釧路を再訪したり、初秋に知床へ行ってみたりと、道東の地理や交通は何となく分かるようになった。

今年の冬は寒くて雪が多かった。たぶん流氷の元になるアムール川流域も寒いのではないだろうか。今年こそは流氷を見に行こう。

旅程としては、釧路からSLで標茶、そこからバスで川湯温泉。翌日はバスで川湯温泉から網走に向かう。網走で砕氷船に乗った後、さらにバスで紋別へ行って夕方の砕氷船に乗船。最終日も紋別で砕氷船に乗った後、羽田への直行便で帰京する計画である。スケジュール的にはキレイにハマり、ほぼ完璧な計画である。航空券を取り、SLと流氷船の予約を入れた。

しかし、あとは行くだけとならないのが、今回の旅である。

まずSLが故障してしまった。同時刻でディーゼル牽引の列車が運行されるらしく、予定に影響はない。そして紋別の砕氷船「ガリンコ号」の新造船も故障してしまい、古い船のみでの運航となるらしい。こちらも予約振替があって、予定への影響は軽微。

SLには追加料金的なものがあるようで、ディーゼル機関車だと指定券の差額返金。砕氷船の方は新造船に追加料金があるらしく、こちらも乗船券の差額返金。こういう場合は料金が安ければ良いということはなく、むしろ安い方が悪いのではないか。

昨年の知床訪問時に天気は悩むだけ無駄と悟ったはずではあるが、最大の難関は天気だった。出発の前週から何度も週間予報を見ていたが、どうも旅行3日目の天気が悪いようだ。

悶々と悩んだ末、出発の前々日になって日程変更することにした。紋別へ先に行き、網走経由で川湯温泉へ。飛行機と砕氷船、それにホテルには空きがあり、まずは予約を変更。

しかし冬の道東は難易度が高かった。

北海道ではレンタカーを借りる僕とはいえ、それは夏の話である。東京の雪道で歩行中に転びかけるようなオッサンに、北海道の雪道で自動車を運転する資格はないものと思われる。ゆえに冬は公共交通機関を頼るしかないが、紋別に先行する逆ルートでは、バスも釧網本線も接続が悪い。

川湯温泉からは釧路を経由し、午後のフライトで帰ろうと思ったが、移動時間より待ち時間の方が長くなる。網走に戻って、網走空港からのフライトで戻るにしても、冬の網走駅で3時間待ち2回は気が遠くなりそうだ。結局、川湯温泉は挫折。1泊で流氷だけを見に行くことにした。

当日、羽田からのANAで紋別に着くと曇っている。ちょっと暗い気持ちになってしまった。もはや天気は悩むだけ無駄なのだが。それでも砕氷船に乗る頃には多少の青空が見え始めた。日没の時間帯には夕焼けらしきものも発生。

ここに至って悩む意味はないが、だからと言って鷹揚にもなれないまま、紋別の街へ夕食に出た。部屋に戻って外を見ると、空には月が出ていた。明日は期待できるのだろうか。

翌朝は4時半に起き、砕氷船へ。空を見上げると快晴である。なんとも素晴らしい日の出を楽しむことができた。

最初の完璧な計画からは随分と変わったが、悩んだかいがあった。写真撮影という目的がある以上、やっぱり天気について鷹揚になるのは難しい。これからもグジグジと悩みながら旅をするしかないのだろう。