ろんどんのおもいで

ベネチアからオリエント急行でロンドンに向かった。

ブリテン島では基本的にスコットランドを目指すことにしており、乗り継ぎなど以外、あえてロンドンに滞在することはない。今回もオリエント急行に連れて行かれるがまま、なんとなくロンドンに行ってしまったようなところがあり、どうもロンドンは食わず嫌いである。

拒否できないときのみ、止むを得ず。僕の中ではロンドンと生牡蠣は同じポジションである。

どうもロンドンは微妙だと思っていた。物価は高いし、発音できないような地名は多いし、わざわざ行きたいようなレストランもない。

今回のロンドンではビール醸造所に行ってみた。ここ数年、cask conditioned aleという、ハンドポンプで注ぐエール・ビールに興味があり、日本では飲む機会も少ないので、試飲がてら見に行こうかと思ったのである。

Tubeにのってロンドン郊外のFuller’s Breweryへ。テムズ川沿いにあるLondon Prideの醸造会社である。

醸造所の脇に直営のパブがあるが、金曜の午後に行ったせいか、すでに従業員が飲み始めていた。全体的に週末の気分が漂うなか、気のよさそうな爺ちゃんのガイドでツアー。ビールの製造工程はウイスキーの製造工程の前半とほぼ同じなので、たいして発見はない。むしろ興味は試飲場で、ポンプ式のサーバーはどういう構造になっているのか、である。「どうなってるのよ?」と聞いたところ、いろいろ説明してくれて、「じゃ、やってみろ」とのこと。

つまりは、そういうことである。人生、試して分かることも多い。食わず嫌いは良くないと思ったが、それでも生牡蠣はイヤだ。

かばらん

ウイスキーといえば、スコットランド、アイルランド、北米、日本あたりが有名産地だが、ワインと同じく新世界化していて、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、インドあたりで新しい蒸溜所が出来ている。そんな新世界ウイスキーでも、最近の話題になるのは台湾のKAVALANである。行き先に蒸溜所があれば、なにはともあれ行かねばなるまい。

蒸溜所にメールをしてアポイントを取り、台北から高速バスで宜蘭という街に行く。全体的には日本のどこかで見たような、ありふれた中小都市の光景が広がっているが、しかし民家の庭先にヤシの木が生えていたりと、やはり南国である。

そんなこんなでウイスキー蒸溜所に着くと、キルンを模した建物の横にヤシの木が植えてある。スコットランドの蒸溜所みたいなのに、庭には南国の木。若干ありえない感じがいい。

もうひとつ衝撃的だったのは熟成庫。熟成庫1階にあるバーボン樽だけみたいだが、そこでは熟成中のウイスキー樽が立ててある。初めて見た。暑いと熟成中の蒸発量 (Angel’s Share) が多くなるが、立てれば空気に触れる面積も減らせて、蒸発量も減らせそうだ。パレットを使えば手間なく蔵置量も増やせるし、理にかなっているのかもしれない。僕が今まで見てきた蒸溜所は、一番手間のかかる熟成方法を見学コースで見せるようにしていたので、一番手間のかからない方法を見せられるのは画期的である。

バーボン樽で熟成させた原酒と、スモーキーなタイプの麦芽から作った蒸溜所限定の原酒を買って帰ってきたが、結局、サンプルでもらってきたシェリー樽の原酒が一番うまい。やっぱり人生そんなもんか。

2014/04/15 はくしゅうのおもいで

先日、フトしたことから山梨県の白州蒸留所に行った。東京からバスで行ったのだが、久々に乗ったせいか長距離バスは疲れる。渋滞もあって往復7時間くらい乗っていたが、飛行機で香港あたりに往復するよりも厳しい。どうしてバスは疲れるのか。

1. 時として渋滞する。
渋滞とは停滞であり、絶望である。着陸の順番待ちであっても、飛行中は少なくとも移動しており、そこには希望がある。

2. ビールすらない。
片道3時間ほどであれば、軽く食事をして、ビール二杯くらいで丁度いいはずだ。だが、サービスエリアにビールは売っていない。飛行機ならウイスキーも飲めるのに。

3. 途中休憩。
いちいち止まる。ソウル、上海、台北と経由して香港に行く話は聞いたことがない。

4. サービスエリアのカレーパン。
揚げパンにカレーが入っている。もたれた胃に刺激が加わる。

5. 東京付近の渋滞。
高尾付近まで戻ってくると、もう旅の気分は終わりである。そこからは諦めて迅速に帰りたいが、真綿で首を絞めるように調布あたりでも渋滞している。

こんどはJALで白州に行こうかと思う。