北半球の宿命とはいえ、年末年始は寒い。そして新年のカウントダウンは宿命的に夜である。
寒いのに深夜。
これがカウントダウンが嫌いな一因である。ほかにも人混みが嫌いだとか、ノリが悪いとか、人付き合いが悪いとか様々な要因があるが、結果的に12月31日の夜に出歩くことはない。
寒い中を人混みに出かけることは、日中であってもしないので、初詣もしない。正月は人気のない職場で適当に仕事をして、あとは家に籠っているのがいい。
今年は何故か1月2日が休みだった。もっとも休めるのと分かったのが12月30日。31日は会社へ行き、1月1日から無駄な4連休である。ゴロゴロと無駄に過ごすしかない。
年末にそんな予定を話すと、寝正月はカビが生えるから良くないとのこと。寝てばかりいないで、規則正しい生活リズムを維持し、散歩程度でもいいから街へ出るべきだとの指摘を受けた。
もっともである。
しかし、もっともな指摘を真に受けたことが人生であっただろうか。
ないわけではない。
間に受けたのは、役に立たない投資信託の話と、ホラ話と、悪い冗談くらいである。しかし、それでも、真に受けた時には、もっともだと思ったものだ。
反省するだけならサルでもできるというが、サルでも何度か失敗すれば学ぶ。さすがに僕も学ぶ。
当初もっともだと思った指摘は誤っている。もっともな指摘を真に受けてはいけないのである。学びから導き出された叡智である。
そんなこんなで寝正月を過ごした。2001年にさかのぼってデジカメの写真を整理し、あとはゴロゴロと無駄に過ごす。年末に飲み過ぎた分を取り繕うべく、12月31日から1月2日まで禁酒をしてみたが、酒を飲まないと昼夜逆転の生活を送るようになり、入浴のタイミングをのがす。年末から4日間ほど入浴しないでいると、出かけていないのに臭い。寝正月でカビが生えるのは事実だったかもしれないとの疑いを持つ。
そして1月5日に万難を振り払って会社に行った。デスクで座っていても集中力なく、午後には帰って寝たくなる。睡魔の彼方に、規則正しい生活リズムを維持すべきという指摘がよみがえる。
いずれも、もっともである。
うつむき気味に職場を出て、ストレッチ教室に行った。寝正月の間に体はガチガチになっていた。なんとかマイナス15cmに到達した前屈も、マイナス20cmに逆戻り。寝てばかりいるのは体に良くないとインストラクターの兄ちゃんに指摘される。
もっともである。
もっともだと思ったことは真に受けてはいけないと、人生から学んできたつもりだったが、学びから導き出された叡智は過りだった。
僕はサル以下かもしれない。そんな疑惑が芽生えた、年の初めの一日だった。