2012/11/24 としおとこ

先日、知り合いのオッサンと香港に行った。このオッサンとは、年に一度、海外に行っている。今年はスペインを目指したものの、日程的に折り合わず。この三連休に一日足すとシベリアに行けることが分かったが、冬のシベリアは文字通り寒そうなので却下。妥当なところで香港になった。

別に買いたいものがあるわけでもなく、僕は飲茶とスターフェリーとトラムがあればいい。しかし、このオッサンは四川料理が食べたいといった。それもいいだろう。

香港人は辛いものを避けるという。それでもマンションの一室で営業している四川料理店を探して行ってきた。香港にしては珍しく、本場の四川料理が食べられるとのことである。

初めて食べた本場の四川は異様に辛かった。が、確かに旨い。青島ビールを水がわりに飲みつつ、汗をかきながら食べた。北京語も広東語もできないが、コックのオッサンとウェイターの兄ちゃんに感動を伝えつつ、店を去った。こういう時代だからこそ日中の相互理解に貢献したい。

が、感動は儚い。現実が目の前に迫る。

その晩はゲップをする度に激辛な胃液が食道を上がった。辛み成分と酸で食道へのダメージは甚大なものがある。そして翌朝はピーである。それも尋常なレベルではない。もはや赤い液体である。昨夜の過剰な刺激に腸が耐えられなかったようだ。

それだけではない。ピーピーしつつ、出口付近にも甚大なダメージを受けた。これも辛み成分のためだろう。あまりのダメージのため、数日は歩行困難な程だった。

ところで、一昨日、僕は36になった。去年の誕生日は花が咲いたが、今年はおしりが痛かった。人生は厳しい。

2012/09/02 さんせばすちゃんのおもいで

サンセバスチャンの大半はバルで過ごしたものの、最終日にミシュラン三ツ星レストランに行ってきた。サンセバスチャン付近には三つ星レストランが3軒もあるが、海を見下ろす高台にある店に行った。繊細系で好きなタイプだった。いくらバルのピンチョスが旨いとはいえ、バルで繊細系は難しい。

http://www.akelarre.net/

旅行先を気に入ってしまい、その場で来シーズンの予約をして帰ってきた話をたまに聞くが、僕はそういうタイプじゃないと思っていた。ところが今回はやってしまった。レストランに行く前にホテルで年末年始の予約を入れ、レストランも気に入ったので帰りがけに予約を入れてしまった。

もちろん伏線はあって、これは5月くらいから気になっているのだが、こんどの年末年始の曜日配列は最高である。冬のバスクはどうなんだろうか。年末にスペインでユーロは使えるのか。ぼくは休みを取れるのか?

それはさておき、レストランを絶賛した後で書くのも妙ではあるのだが、バスクでの最高の出会いはバルで出てきたトマトのカツオ包みだった。湯引きしたトマトの中にシーチキンが入っている。少量のソース、少量のマヨネーズ、塩、コショウなど。シンプルだが、絶妙なバランスである。

どうしても最後に食べたいと思い、レストランで膨れた腹を抱え、深夜の旧市街へ最後の見廻りに行った。街を二周したところ、ようやく店内に進入スペースを見つけ、「トマテ・ボニートが食べたいんだけど」というと、キッチン内で一騒動の後に出てきた。直後に看板のメニューが消されたので、最後の一つだったのだ。

あぶないところだった。

2012/09/02 さんせばすちゃんばるのおもいで

オッサン系バルは絶滅危惧種なのだろうか。そんな気持ちでバスク地方に向かう早朝の列車に乗った。

そう書くと何となくルポタージュぽいが、実際のところ、前日はバルに遅くまでいたので、朦朧としていただけだ。スペインの車窓を楽しもうとの目論見は外れ、ひたすら寝ていた。なんとなく目を開けたときにヒマワリ畑があり、ああスペインだと思ったものの、次の瞬間には寝ていた。感動には程遠い。

気付くと正午ごろ、サンセバスチャンの駅に着くところだった。ホテルに荷物を置き、さっそく旧市街へ探検に出かける。

ここの旧市街はすごい。バルだらけだ。何軒か入り口から様子を伺ってみると、繁盛店、ガラガラ店、地下がレストランの大型店、夫婦でやっているような小規模店など、いろいろだ。改装してLEDやらレーザー系の照明なディスコ風バルも何軒かある。しかしオッサン系が多い。

繁盛している店のカウンターに少々の隙間を見つけたので入ってみた。気のよさそうな兄ちゃんが「やぁ、何を飲むんだい」と聞いてくる。バスク特産のチャコリを片手に店内を見ていると、ここの店は勝手にピンチョスを取って、あとで数を自己申告するようである。取り皿をもらい、手近なところにあるピンチョスを食べる。うまい。「セニョール、そろそろ帰るよ」と正しく申告して店を出た。

あとはこんな調子で、オッサン系バルを攻めていく。隙間があれば突入し、満杯なら次回まわし。何軒入っただろうか。夕食の時間帯で混みあってくる20時くらいには完全に酔っ払っていた。混雑は苦手なので、ホテルに戻って遅めの昼寝。それでも22時過ぎには起きて戦列に復帰していた。

翌日も大体こんな感じで一日が暮れていった。

酔っていない折々に周囲の客をみると、オッサン同士で適当に会話をしているし、一人でノンビリ飲んでいるやつもいる。自由でよろしい。

そんな中、あるバルで見覚えのあるオッサンが飲んでいた。よくよく考えると、そのオッサンは数十分前に僕が行っていた別のバルの店主だった。このオッサンは飲みながら仕事をしていたのに、もう店を抜け出して一杯やってる。なんてことだ。素晴らしい。

バルは最高だ。そしてバルはオッサン系に限る。