よく旅行に出かけるが、あまり観光には興味ない。航空券を買って、成田空港行きのスカイライナーに乗ったら、それだけで満足するタイプである。美術館とか博物館は苦手だし。
キューバのガイドブックをペラペラめくっていると、チョコレート会社のハーシーが20世紀初期に敷設した鉄道が残っているとのことである。その名もハーシートレイン。キューバ唯一の電車で、1日3往復だそうである。どうせラム会社へのガイドを頼むので、帰りに駅で降ろしてもらうことにした。途中のハーシーという駅まで往復してみる。
が、旅行会社の返事は微妙に曖昧だった。
・電車が壊れると運休。
・停電すると運休。
とのことである。道理である。たぶんJRは口が裂けても言わないと思うが。
正式に依頼すると、旅行会社の人が駅に電話で確認してくれたが、駅員が電話に出ないとのことである。やむを得まい。
ラム会社で買い物をした後、ホテルに荷物を置いて、駅へと向かった。駅には電車が止まっていた。少なくとも写真を撮って帰れる。ガイドの兄ちゃんが駅のベンチに座っているオッサン (その後、車掌さんと判明) に聞いたところ、今日は電車が動いているらしい。すばらしい。ハバナ市街に戻るフェリー乗り場の場所を教えてくれ、そして兄ちゃんは去っていった。
ベルが鳴ると窓口があいたので、切符を買った。さらに手を石鹸水みたいなもので消毒させられる。電車に乗る前に消毒させられる話は聞いたことがないが、そういうものだろう。しばらくすると本当に電車が動き出した。
乗車中、さっきの車掌さんに運転席に連れて行かれた。意思疎通の手段に事欠く中、日本から来たというと、なぜか新幹線の運転士だと思い込まれた。誤解を解くだけのスペイン語力はない。さっきから左のポケットに入っている5ユーロ札を出したら、そのまま運転させてくれそうな雰囲気だった。