現代の都会人は「ひもじい」思いをするだろうか。
地震でも来ない限り「否。」と思っていた。街にはファミレスもコンビニもあり、ピザでも寿司でも配達してくれる。たしかにスーパーよりは高いかもしれないが、法外というほどではない。
が、しかし。
羽田から世界へなんてゴタクにのせられて羽田0時05分発のJALに乗った。0時発だから、22時過ぎに空港に着けば十分だ。21時半まで銀座でウイスキーを摂取してから羽田に向かった。
羽田国際線は深夜発着枠メインだから、22時過ぎでも空港は活気にあふれていた。深夜は死んだようになる成田とは大違いである。眠らない街、東京。千葉ではない。
羽田空港にはラーメン屋がある。焼肉屋もある。この前テレビで見たのだ。ラーメン・ギョーザ・ビールにするか、焼肉・ビールにするか。心が躍る。
が、しかし。
ラーメン屋も焼肉屋も22時で閉店だった。なんてこったい。
さらに、お茶漬け屋も、何もかも、飲食店は22時閉店である。唯一あいていたのは24時間営業のパブだけだった。
パブにはコールスローサラダなどという、人間は食べないようなものしかない。そんなのは食べる気がしないから、ビールを2杯飲んだ。
昼ごはんを食べたのは文字通り昼であるからして、この時点で空腹感を覚えていた。空腹感は酔いとビールの炭酸でごまかすのだ。おなかがすいていれば機内食も旨いはずである。
が、しかし。
機内食がコールスローサラダだったというわけではない。コールスローよりも格下のツナサラダだったというわけでもない。機内食がなかったのである。
厳密に言うと、食べものは出た。
おにぎり。
唐揚げとか玉子焼きのついている、おにぎり弁当ではない。しゃけのおにぎりが1個である。紙コップの冷茶をすすりつつ、正味30秒で食べ終わる。それだけ。
それからの6時間は地獄だった。狭いスペースで食欲も満たされず、横になることもできず、ひたすら耐えるのみ。
飛行機の中であるからして、空腹に耐えかねて暴れるとテロリスト扱いされてしまう。飛行機は飛んでいるから、ピザの出前を取るわけにもいかない。太平洋上にはコンビニもない。
現代の都会人も羽田発のJALに乗ると、ひもじい思いができる。