オッサン友達と横浜バーめぐり。途中、汁物を求めて夜の中華街を歩いていたが、どこに入ればいいのか分からない。
ふとみると、ポツンとボロい中華料理屋があった。入り口を覗くと、テーブルの上にビールの空き瓶が放置されている。
キリンラガーの大瓶。奴が呼んでいる。そう感じた。
店に入ると、コックの格好をした爺さんが一人、新聞片手に座っている。
店全体が切ない場末感で溢れている。
ビールとワンタンを頼むと、爺さんはビールを出し、店から出て行った。
地味な食堂にオッサン二人取り残される。ラジオの深夜放送がかかっていた。空虚なジョークが響く。切なさは既に痛々しい程になっている。
ラジオに飽き、ビールにも飽き、地上の営みから取り残されてしまったのではないかと思い始めた頃、爺さんがワンタンを持って店に戻ってきた。店に入ってワンタンを頼んだのに、爺さんは店の外から出来上がったワンタンを持ってきたのだ。
宮沢賢治の世界のようだった。