カレンダー上の祝日に関わらず月末・月初は仕事が入るサラリーマン人生を歩んでおり、年末年始とゴールデンウィークは存在しないに等しかったが、ここ数年で風向きが変わってきた。それでもGWを計画的に休むまでには至らず、ソワソワし始めたのは今年になってからだった。さすがに4月末から通しで休むわけにはいかないが、5月だけでも4連休ある。4連休あればヨーロッパに行けると信じていた時代もあったが、僕の肉体は老化し、飛行機はシベリア上空を飛行できないし、円の価値は下がり続けている。欧州は諦めるとしても、東南アジアは視界に入るだろう。
それでも日程的にはタイトである。羽田を5/2深夜に出て、夜行便で羽田へ5/7早朝に戻る、航空料金が一番高そうなスケジュールしか選択し得ない。
時すでに遅し。シンガポールもバンコクも、それなりに高い。空席があるだけマシなのだろうか。諦めずに探すと、なぜかホーチミンシティが相対的に激安だった。距離が短いせいもあるのだろうが、シンガポールやバンコクの半額くらいである。早急にホーチミンシティ往復を予約し、それから最終目的地を考えることにした。
天候で絞ってみると、どうやら中部ベトナムだけが雨季に入っていないらしい。すでにホイアンには行ったことがあり、探してみるとフエという古都があった。
ここまで何故か既視感があったが、やっていることは去年と大して変わらなかった。
5/2は適当に会社をこなし、荷物を取りに帰宅してから羽田へ向かう。大した荷物でもないので、家の近くから路線バスに乗ろうとするものの、目の前で乗り損なってしまった。どうせバスは遅れて来るだろうと高を括っていたのだが、GWで道路状況が良いらしく定時運行だった模様。結局JR駅まで歩く羽目になったが、横浜駅から空港までの高速バスには間に合った。それでも最初の最初でケチが付いたことは間違いなく、幸先の悪いスタートという事になるのだろう。ウジウジしながら旅立った。
幸先が悪いのは僕だけだったのか、幸先の良かった大多数の乗客のおかげなのか、飛行機は予定通り早朝のホーチミン空港に到着した。寝ぼけたままのベトナム入国だが、例によって上手く機能しているとは思えない入国審査である。昨年は到着日の初便だったらしく速攻で通過できたが、今年は2便目だったようで、既に入国審査場には行列が出来ていた。どこに並ぶべきか案内がないので、良く分からないまま短そうな列の最後尾に並ぶ。こういう時に限って、やや攻めたスケジュールの乗継便を別予約で取っており、ちょっとビビって目も覚める。フーコック島へ行くらしい隣の客は、既に絶望していた。
前夜のようにバスに乗り遅れて歩く程度なら問題ないが、飛行機に乗り遅れるのは勘弁してほしい。最初からケチが付いたことを思い出し、暗い気持ちで列に並んでいた。それでも並んでいる間に入国審査官が続々と出勤し始めたようで、徐々に稼働している窓口が増え、結果的には余裕で通過できた。フライト到着を入国審査官の出勤時間に合わせるか、フライト到着に合わせて入国審査官が出勤するか、どちらかにしてくれた方が精神衛生上よいのだが。
ともあれ無事にフエまでの国内線に乗れた。スムーズにフエ市内のホテルに到着したが、チェックイン時刻までは時間があり、アーリーチェックインは別料金との事。時間調整も兼ねてGrabで車を4時間くらいチャーターして郊外の観光地へ行こうと思っていたのだが、アプリからのチャーターは出来なくなっていた。普通に片道の配車依頼しようかとも思ったが、街に戻ってくる車がいないのも困る。ホテルの人にタクシーチャーターを相談したところ、結局どこかの旅行会社に電話されて、プライベートツアーを紹介された。20分後にはピックアップ可能とのことで、そのまま依頼。
プライベートツアーを依頼したのは良いが、支払いは現金だけだそうである。乗り継ぎがタイトだったのと、あまりにもスムーズにホテルに着いてしまったので、ベトナム到着後にATMへ行けていなかった。ホテルには銀行のオフィスが入っていたが、営業店というよりも事務所らしくてATMは1台しかなく、しかも壊れていた。ホテルの周辺を歩き回ってATMを見付けたが、そういう時に限って通信エラーで引き落としできない。昨夜の路線バスの一件を思い出し、また暗い気持ちになる。今回の旅は上手くいかないのではないだろうか。
結局ピックアップ時間までに現金は用意できず、観光前に銀行へ行ってもらう所からスタート。ドライバー兄ちゃんは英語が通じたが、当初は意図が通じなかった模様。たしかに現金を全く持たずにツアーの依頼をする奴なんていないだろう。
しばらくしたら銀行の店舗を見付けたので、車を止めてもらった。ドライバー兄ちゃんのおかげで、警備員が駐車場から機械まで付き添ってくれるVIP待遇だった。こちらのATMは正常に動作し、やっと安心して観光をスタートできた。
まずはカイディン帝廟へ行ってもらった。ここを見たくてフエに来たようなものなので、初日に行っておくべきだろう。フランス文化に大いに影響されたベトナム王様の、豪華絢爛な墓所である。見に来て正解と思える、素晴らしい場所だった。有名観光地とはいえ結構な僻地にあり、戻りのタクシー空車などは見かけず。チャーター車で来て正解だった。
別の王様の墓所と仏教寺院を見てから、フエ市内に戻った。なぜか最後の仏教寺院から市内までは船で戻らされるのだが、結局のところ土産物屋の代わりだった。川の上なので逃げることは不可能、しかも空港値段である。大量生産の土産物を買うくらいなら、暴利でもビールが欲しかったが、そういう選択肢はないらしい。先程は僕がATMを探していたが、今や僕の方がATMなのだろう。それでも川風は涼しいし、猛暑の中を道に迷うこともない。
概ね成功と言って良い一日だった。
最初の路線バスに乗り遅れたのでケチが付いたと思ったが、むしろ羽田からの飛行機に間に合ったことを重視すべきだった。本筋の結果が良ければ、全て良しと思うべきだろう。枝葉末節に関わる無駄な心配は、するだけ無駄である。