くしろのおもいで

昨年、取引先から貰ったカレンダーをオフィスで眺めていたところ、2月下旬の金曜日を休むと4連休になることが判明した。その頃は未だインバウンド需要が低調であり、もう一回、流氷を見に行ってみたいと思った。その日の仕事はさておいて、予定を考え始める。

4日間もあるので、厳冬期の知床五湖トレッキングに参加してみたい。大まかな予定を決めたところで早々に自宅に帰り、その日の夜には航空券やホテルなどの予約を完了した。ちょっと早目の手配だったせいか、知床のトレッキングは予約受付期間前であり、改めて手配することになった。

その後、昨年12月にはモルディブに出かけて絶望的な日焼けをしたり、年末に思い付きで釧路に行ったりしているうち、知床五湖のことをすっかり忘れてしまっていた。

気付くと年が変わって1月になっていた。同じ日程は誰もが思い付くようで、既にトレッキングの予約が全く取れなくなっている。キャンセルが出ないものかと何度もチェックしたが、どうにも無理らしい。我ながら大失敗である。

やや絶望的になってFacebookを見ていたら、釧路湿原の温根内ビジターセンターでスノーシューの貸し出しをしているとのこと。そういえば昨年の釧路湿原は微妙な天気だった。再度チャレンジしても良いのではないだろうか。

羽田〜釧路のフライトを調べると、残席が数席あった。JR釧網線が運休になった為に挫折した川湯温泉の旅館も、最後の1室が残っていた。さらに知床へのゲートウェーである女満別空港までの航空券は、キャンセル可能な運賃で取っていた。これだけ条件が揃えば、知床をやめて釧路に行くしかない。出発10日ほど前のドタバタである。

東京を昼に出るフライトで釧路へ向かった。初日は曇りの予報だったので期待していなかったが、到着したら晴れていた。釧路は (自称?) 世界三大夕日の街である。散歩がてら、港へ夕陽を見に行った。

翌朝は予報通り晴れ、釧路駅前から路線バスで釧路湿原へ向かった。温根内に着いた時は曇っていたが、しばらくすると晴れてきた。ついに釧路湿原の冬景色をベストな天候で満喫できた。

この時期に湿原の木道を歩く分にはスノーシューは要らないようである。それでも昨年12月より積雪が増えていて、違う風景を楽しめた。あちらこちらで鹿と遭遇。なかなか楽しい。ほとんど無人で、雄大な風景を静かに味わう事ができた。

再び路線バスで釧路駅へ戻って、JR釧網線で川湯温泉に向かった。北海道のローカル線は収支が過酷なせいか、ディーゼル車両1両だけの運行である。それにも関わらず、狭い通路まで人が溢れて乗降に時間がかかる。混雑で約30分の遅延。乗車時間が長いので、たまに混むような日は1両増結して欲しい。

この日の晴れは長くもたず、川湯温泉で降りたら曇天だった。晴れていたらタクシーで硫黄山に行こうと思ったが、やむを得ない。バスで温泉へ向かった。泉質が素晴らしい、いい宿だった。

翌朝は曇り予報だったが、起きたら晴れていた。網走に向かうバスは10時半過ぎの出発である。朝風呂はパスすることにして、地元のタクシー会社に電話して硫黄山往復を頼む。数年前に来た時は天気が悪かったので、再チャレンジだ。硫黄で黄色い山肌に、モクモクと水蒸気があがる。ワイルドな光景である。

天候が原因で川湯温泉には2度も行きそびれていたが、今回は自分の手配ミスが原因で行くことになった。これだけ旅に出ていて、行くも行かないもコントロールできていないのはどうかと思うが、終わり良ければ全て良し。結果的に素晴らしい釧路滞在になった。