オッサンふたりでゴールデンウィークにベネチアへ行こうと思って挫折した後、夏休みスペイン作戦に切り替えたが、イマイチ決めきれないままオッサン旅行は当面ギブアップ。
一方、ふと気付くとカールツァイスの高級レンズを買っていた。買ったからには使わないといけない。高級レンズに見合う絶景に行こう。そう思って絶景ポイントを探した。
絶景といえばウユニ塩湖に行ってみたいが、ちょっと調べただけでボリビアは遠いとわかる。近場の絶景といえばマリーナベイサンズ・ホテルのプールに行ってみたいが、よくよく考えると単なるプールである。しかもプールを撮りに行ったのに、プールで盗撮オッサンと化す恐れもある。そしてシンガポールは暑い。
夏の涼しいヨーロッパへ大自然を見に行こう。ただし海は盗撮オッサン化問題があるので、山に行くしかない。
山といえばスイス。ジュネーブから鉄道に乗り、マッターホルンの麓の村へ。マッターホルンの見えるロッジで3泊、帰りにレマン湖畔のリゾートで1泊するつもりだったが、天気予報を何度見ても、いまいちマッターホルン界隈は天気が良くない。天気予報の精度は改善が期待できるが、予報の内容は改善できない。それが分かっていても、天気予報を見てしまう。結局、湖畔のホテルを期限ぎりぎりでキャンセルし、ロッジに延泊することにした。
そこまでして絶景ポイントに行ったとしても、絶景を見られるとは限らない。雲の位置は刻々と変わり、雨が降る日もある。朝は夜明け前に早起きをしないといけないし、夕食の時間をずらしてでも日没を見ないといけない。
水曜日にマッターホルンの麓の村に着いたが、山の頂には若干の雲がかかっている。木曜も然り、金曜日は雨。祈るような気持ちで土曜日を迎えると、晴れていた。
朝食をパスしてハイキングに出かけた。湖にマッターホルンが映っている。息をのむような光景は、絵に描いたようである。とはいえ、実感は乏しい。風で水面が揺れると、水面の像も崩れる。風の止む瞬間を待たなくてはいけない。景色に心を奪われるべき時に、ぼくの心は風に奪われていた。
購入前にカールツァイスのレンズは使いこなすのが難しいと言われたが、たしかにカールツァイスは難しかった。