上海~蘇州~杭州にかけては水郷古鎮と呼ばれる古い街が多い。僕は古い街が好きなので、以前に紹興へ行った時にも、深夜と早朝に歩いて古鎮を見に行った。
今回の杭州滞在のメインは古鎮である。水郷古鎮といえば蘇州が有名だし、上海周辺の古鎮は地下鉄とバスで気軽に行けるようである。一方、杭州あたりの古鎮に関する日本語の情報は少ない。
古鎮というのは、つまり手付かずの古い街が残っている場所なので、必然的に現代的な開発からは取り残されている。交通の便は良くなさそうだ。あまり知られていない古鎮を見付けたとしても、辿り着くのが大変そうである。
結局、杭州にビジネスパートナーがいる友人に泣きつき、友人の知人にヘルプしてもらうことになった。「友人の知り合いは友達」という理論である。中国語で言うところの「関係 (Guanxi)」だろうか。20年以上前、大学時代に中国社会学で習ったのだ。どこに行けばいいか分からないまま、友人の知り合い (=友達) に丸投げした。
一方、杭州は龍井茶の産地としても有名である。友人いわく、お茶の村は梅家塢という場所らしい。杭州市内から路線バスがあるようだ。バスで行こうと思っていたところ、メーデーの大型連休なので甘いことは考えない方がいいとのこと。
結局、龍井茶の産地訪問も (友人の知り合い=) 友達に丸投げし、二日ほど案内してもらうことになった。しかも「友人の知り合い = 友達」は滞在中に不在とのことで、「友人の知り合いの家族」に案内してもらうことになった。どんな関係性理論でも「友達」からは遠く、単に迷惑をかけているパターンである。
ところで僕は中国語ができない。しかも中国には金盾といわれる、いわゆる「サイバー万里の長城」があり、Googleに頼って生きている僕には厳しい。最低限の準備として、Google Map代わりの百度地図、ダウンロード型の翻訳アプリ、それにWeChat (LINEも使えない) をiPhoneに仕込み、さらに空港で地球の歩き方を購入し、杭州へ旅立った。
成田からのANAで杭州に到着、余裕で入管も税関も突破し、到着ロビーに出た。空港まで迎えに来てくれているはずだが、それらしい人はいない。iPhoneを見ると、WeChatのメッセージが届いていた。WeChatで届いた中国語メッセージをコピペで翻訳ソフトに移し、日本語に訳す。それに対する日本語の返信を翻訳ソフトで中国語に訳し、それをコピペしてWeChatで送信。その繰り返しである。面倒くさいといえば面倒くさいが、何とかなるものである。無事に合流。
一度ホテルに向かい、それから龍井茶の産地へ。道は渋滞が激しいし、バスを見ると凄い混雑である。たしかに路線バスでは辿り着けなかっただろう。
翌日は午後から古鎮に連れて行ってもらった。しかも英語ができる親戚が参加してくれている。「友人の知り合いの親戚」である。さらに遠い。どれだけ迷惑をかけているのだろうか。
百度地図で見ると、古鎮は浙江省湖州市徳清県の新市古鎮という所のようである。杭州からは車で1時間半ほど。自力では絶対に辿り着けなかっただろう。昼間は混んでいる観光地だが、夕方になると人も減り、風情のある素敵な場所になった。
さて、最終日は夕方の関西空港便しか取れなかったので、出発まで余裕があった。世界遺産である西湖のあたりで時間を潰してもいいが、どうせ混んでいるだろうし、いまいち芸がない。前日にホテルで地球の歩き方を眺めていたところ、西渓湿地公園というのがあった。西湖のあたりから西へ5キロとのこと。
思えば杭州に来てからというもの、移動は丸投げばっかりだった。自力で西渓湿地公園に行ってみよう。百度地図でバス路線を調べると、ホテルからは乗り継ぎ1回で約50分の行程らしい。
朝、早めに起きてホテルをチェックアウトした。荷物を預かってもらい、西渓湿地公園に向けて出発である。こういう時にタクシーがいるとラッキーなのだが、そうは問屋が卸さず。少しは苦労して旅をしろということだろう。
百度地図では何ルートか出てきたが、杭州の中心部に入り込んで渋滞に巻き込まれるのは困るので、外側から回り込むことにした。赤羽から中野へ行くのに、神田経由の中央線快速ではなく、埼京線から新宿で乗り換えるようなものだ。たぶん。
ホテルからバス停まで15分歩き、バスを待つ。初めての中国の路線バスである。
旅行中に苦手な事は数多くあるが、地元バスに乗るのは間違いなく上位に入る。スマホの地図アプリのおかげで、「キライ」程度までハードルは下がってきたけれども。おつりが来ないのは諦めるとしても、小額紙幣や小銭を用意しないといけないのが面倒くさい。しかも紙幣が使えない場合もあるし、前払いじゃない場合もあるし、乗り換え票をくれる場合もあるし、いろいろ悩ましい。
ウジウジと悩みつつ、バスに乗った。紙幣は使えたが、路線ごとに値段が違う方式のようである。同じ区間に乗っても、乗車した路線によって料金が違うのだ。あまり小額紙幣を持っていない身には、トリッキーな落とし穴である。乗り口で1元札を探していたら、どうでもいいから奥へいけと言われた (気がする)。
休日の朝だからなのか、バスは意外に空いていた。しかし運転が荒い。座っているのに飛ばされそうになる。それでも百度地図の指示通りに乗り継ぎ、西渓湿地公園に到着した。地図アプリさえあれば迷うこともない。案ずるより産むが易しである。着席中でも手すりに掴まっている必要はあるが。
旅行中はツアーなどには参加せず、自力で何とかすることにしているが、観光地らしい観光地には興味がないせいもあり、いつも移動には頭を悩める。それが楽しみでもあるのだが、人に助けてもらうというのは、ありがたいことでもあり、行きつけない所に行きつける手段でもある。たまに違うスタイルの旅行をすると、いつもとは違う発見が多い。谢谢!!