今の会社に勤務してから、月末の数日と月初の1週間が忙しいことが多い。故に年末年始もゴールデンウィークも結果的に仕事になっていたのだが、今年から仕事のスケジュールが少々変わり、もしかするとゴールデンウィークは休めるかもしれないと気付いた。2月上旬のことである。
よくよくカレンダーを見ながら皮算用をすると、5/3が休めるかは微妙なものの、5/4~5/7は休めそうだった。4連休。自宅にいると、ヒマをもてあましそうだ。
こんな時期に休んだことは過去十数年で二度しかないので、恐る恐る航空料金を調べると、やっぱり航空料金は既に高い。
まずは料金のことを考えずにプランを立てる。5/3は午後まで仕事としても、19時半過ぎに羽田を出るJALのサンフランシスコ行きには間に合いそうだ。5/3の正午すぎにサンフランシスコ着、5/6の午後に空港へ向かえばいいから、現地で丸3日間滞在できる。久々にサンタローザのSchulz Museumに行きたいし、ケーブルカーにも乗りたい。そして海沿いのレストランにも行きたい。かなり充実した3日間になりそうである。
旅の目的と日程の効率性という側面からは、サンフランシスコは素晴らしい。しかし、やっぱり航空券が高い。JALのマイルを大量に抱えているので、無料航空券のキャンセル待ちを入れた。果報は寝て待てと言うではないか。
第二案として、チケットが比較的割安で、しかもキャンセル料が安い航空会社を探してみよう。
航空料金と距離は基本的に相関関係にある。と思う。近い所を探そう。地図的には、左を見ればソウル、下を見れば台湾かグアムあたりだろうか。どこも2月の時点で既にゴールデンウィーク料金になっており、時間帯のよいフライトは通常の倍以上の価格設定である。近い分だけ安いが、それを割安とは言えないのではないか。
もっと地味なところに行かないとコスパが悪い。
ふと地図で上を見ると、ロシアがあった。ウラジオストクである。ヨーロッパへ行く時に立ちはだかる、シベリアの大地の玄関だ。東京からの飛行時間は片道約2時間である。台湾より近い。
日本からウラジオストクに飛んでいるのは、S7航空とオーロラ航空というロシア系の航空会社だけだ。どちらも毎日フライトがあるわけではない。2月にはオーロラ航空が参入していなかったようなので、購入時に調べた段階ではS7航空の独占市場であり、基本的に航空券は高めだった。とはいうものの、2月の時点ではゴールデンウィークだからといって特に高いわけではない。ゴールデンウィークの航空券的にはコスパのいい場所と言えるのではないか。
しかも週4日のS7航空の運航日と僕の休みは一致していた。5/4午後に成田を出るS7航空に乗り、その日の夜にウラジオストクに着く。そして、5/7正午過ぎにウラジオストク発、昼過ぎには東京着。日程的には完璧だが、スケジュール的には無駄が多い。現地滞在が2日少々しかない。そもそもウラジオストクに何があるか知らないので、2日間の滞在が長いのか短いのか想像もつかない。
さらに調べたところ、S7航空ロシア本社のサイトでFlexタイプの航空券を買うと、航空券自体やや高くなるが、4000円くらいの手数料でキャンセルできる。国際線とは思えないキャンセル料の安さである。探し物を見つけた気がした。
ウラジオストクについて何も知らないまま、とりあえずS7航空の航空券を購入した。あとはJALからの吉報を寝ながら待っていればいい。
チケット購入から3ヶ月ほど経った5/4の夕刻、僕はロシアの入国審査を受けていた。ロシア美人の入国管理官だった。どんなに長く待ったとしても吉報が届かないのが人生であるが、妥協した先には小さな幸せがあった。人生、無駄に大きな吉報を待つよりも、目の前の小さな幸せを見つける方がいい。