中南米へ旅に出るのは敷居が高い。
たとえば、治安の問題。スリ程度では済まないような事態に巻き込まれるリスクが高い、ということがある。
しかし、それ以前の問題として、遠い。アメリカ西海岸まで10時間、そこから更に国際線のフライトである。アメリカの場合は国際線~国際線の乗り継ぎでも入国させられるので時間が無駄になるし、そもそも入国時にテロリストか不法移民の候補扱いされるのもイヤだ。それに、どうもアメリカからの帰りのフライトで時差ボケになりやすい。
遠さという側面で言えば、苦手意識は2度のキューバ行きで慣れてきた。そして、いまやESTAによって僕の個人情報は連邦政府に登録されているので、とりあえず無難なオッサンとしてアメリカ入国できる。オッサンになって鈍感になったせいか、時差ボケも最近は経験しない。
ところで、ネットを見ていたところ、美しい街がメキシコにあった。グアナファトである。夕暮れの街が素晴らしい。
過去、何度かメキシコ行きを諦めていたのだが、アメリカ経由の苦手意識を克服できたことでもあるし、やっぱりメキシコに行ってみようか。調べたところ、グアナファトは観光地であり、治安の問題は少ない。この街へ行くだけなら問題ないようだ。
行くと決めれば大して悩む必要はない。最初にグアナファトの写真を見たときに調べたところ、街を見下ろす丘の上に小さいホテルがあった。ここに泊まりたい。
ホテルはネットの予約サイトで取った。部屋数が少ないホテルなので、日程がタイトな場合には早めにホテルをおさえる必要がある。
若いうちなら早朝の到着でも何ということもないが、もうオッサンであり、長旅の後の早朝には、とりあえず部屋は欲しい。幸いホテル代が高いわけではないので、1泊余分に払ってレイトチェックインしようと思った。
未到着で部屋をキャンセルされても困るので、早朝に着く旨をホテルにメールした。が、その返事が来ない。英語で2度メールしても一向に返事が来ず、FAXを送ると不着になる。
そこそこ旅慣れている方だとは思うが、ここまでホテルと連絡がつかないのは珍しい。
最後の手段でGoogle翻訳を使ってスペイン語のメールを送ったところ、やっと数週間後に返事がきた。それに勢いづいて、空港からホテルまでの送迎などの手配を聞いてみたが、再び沈黙の世界。
とりあえず空港のタクシーは問題なさそうだったので、諦めて旅に出た。ホテルまでは辿りつけるとして、本当に予約した部屋はあるのか?
早朝のグアナファトに着くと、はたして部屋はあった。高級ホテルというわけではないのだが、実際、快適で良いホテルだった。フロントの兄ちゃんたちも親切である。メールの返事が来ないのは、それがメキシコだからなのだろう。
丸4日間の滞在で問題は一つだけ。妙に部屋が寒い。メキシコには常夏なイメージがあり、1月でも日中は20度を超える。しかし、夜は寒い。最低気温は5度くらいまで下がる。そんな場所なのに空調設備が全くないコンクリートの建物だった。しかもホテルは南西の斜面に建っており、建物に日の当たる時間は限りなく短い。結果的に、外気温に関わらずホテルの中は冷え冷えとしており、それでも夕方くらいまではビールを飲む気になれるが、夜は毛布にくるまって寝ているしかない。
それ以外は問題なく過ごしたが、チェックアウト時に問題発生。ホテル予約サイトで前払いをしていたのだが、フロントのおねいさん曰く、ホテルと予約サイトの間に前払い契約はないとのこと。念のために予約サイトから貰った領収書のコピーを持って行ったが、そんなものは通用しない。前払い契約がないのが前提であれば、前払い領収書と称するものを信用するわけがないからである。
念には念を入れてみたつもりだったが、ツメが甘かった。そもそもメールの返信が来ないホテルに前払いをした段階で、こんな状況は想像がついたはずである。
日本に戻り、ホテルでの支払い時にもらった領収書を添付して予約サイトに返金を求めた。予約サイト曰く、ホテルと連絡が取れないとのこと。その状況も想像がつく。
ほぼ1カ月後、ようやくホテルと連絡がついたので返金すると返事が来た。