地上で最も魅力的な場所は蒸留所である。山よりもビーチよりも、正直、蒸留所がいい。
マイクロ・ブルワリーのブームの後、いまやマイクロ・ディスティラリーがブームらしい。そのせいか、マウイ島にも蒸留所があった。数軒が見学可能だったが、そのなかの一軒がラムを作っていたので、最終日の帰国前に行くことにした。
蒸留所はアップカントリーとよばれるエリアにあった。ハレアカラ山の麓のエリアである。よくよく考えたら、毎朝、ハレアカラに行っていたのである。ハレアカラの帰りに立ち寄ればよかった。もう最終日なので後悔はできない。
蒸留所はサトウキビ畑の真ん中にあった。蒸留所というよりも、むしろ倉庫の様である。ツアーに参加すると、酒造工程はHey, dudeとか言いそうな兄ちゃんが担当していた。見学の途中でマネージャーを紹介された。こちらはHey, mateとか言いそうなオッサンだった。どちらも短パン長髪である。
マウイで短パン長髪な酒造りの人生もあったかと思うと、いままでの人生は何だったのだろうかと思う。マウイに生まれていたら、いまごろは短パン長髪が似合っていたかもしれない。幼児のころに酒を覚えていたら、いまごろは酒造を生業としていたかもしれない。大人になって酒を覚えていなかったら、サーファーになっていたかもしれない。もうオッサンなので後悔しかできない。
人生に対する諦めの念を抱きつつ、マウイを去った。