むかし、ロサンゼルスでバスに乗っていたところ、ヒスパニックの運転手に「セニョールはどこの出身か?」と聞かれた。日本だよと答えると、「なんと。俺はメキシコのどこかが聞きたかったんだけどな」と言われた。その後も、焼肉屋のヒスパニック兄ちゃんに「おまえ本当に日本人か?」と聞かれるなど、徐々にメキシコは第二の故国になっていった。
そんなことを思い出しながら、ニューヨークからメキシコへと向かった。今回が初メキである。
とはいうものの、そもそも目的地としてメキシコに行くわけではない。経済制裁のせいでアメリカからキューバに直接いけないので、泣く泣くメキシコに行くわけである。ビバ・メヒコ。
朝の3時半に起き、寝ぼけた飼い主に見送られつつ (ネコは熟睡) タクシーを捕まえてJFK空港へ。そして朝一のアエロメヒコに乗った。なにはともあれ眠い。気付くとカンクンに向かって着陸態勢に入っていた。
その後、いまとなっては定かではないものの、漫然とメキシコへの入国を果たし、緩慢にキューバ航空のチェックインに並び、漠然とメキシコを出国していた。空港のバーで、なんとなく銘柄の発音がわかったテキーラを一杯、さらにメニューにある一番高いテキーラを一杯。これで漫然かつ緩慢かつ漠然としていた第二の故郷の記憶が全てなくなった。
異様に座席の間隔が狭いキューバ航空に乗ってメキシコを出た。わずか4時間半の初メキだった。