2013/09/07 なつやすみのけいかく

母親の実家を片付けていたら出てきた、高校時代に撮った写真。槍ヶ岳の朝焼け。高山植物。雪の朝。いかに高校時代に学校へ行っていなかったか分かる。これだけ出かけているのに、しかも学校をサボって昼寝をしていたのだ。アクティブな登校拒否児である。

毎年、オッサン二人で旅に出ている。

5年くらい前に酔った勢いでキューバに行くことにしたのだが、オッサン同士なかなか休みの日程があわず、最初の年はサンフランシスコで妥協した。カリブへの途中というか、とりあえず太平洋を渡ってみたのだ。その後、オッサン旅行は毎年の恒例行事となりつつも、二度と太平洋を渡りきることはできず、香港あたりで済ませることが常態化している。

今年も一月のある日、懲りずにバーで酔っぱらっていると、4日くらいでサンクトペテルブルグに行くような話になった。運河沿いの小道を背中を丸めて歩き、ウオッカをひっかける。ロシア的な暗さとアル中具合が、オッサンの哀愁漂う感じでよろしい。

が、サンクトペテルブルグは遠い。距離的には可能だが、乗り継ぎなどで時間のロスが多く、時間的には西ヨーロッパと大差ない。4日では厳しそうで挫折した。

その後、三月に焼鳥屋で酔っぱらっていたところ、南の島に行くのが良かろうということになった。いまいちオッサン二人で南の島に行く意味が分からないが、少なくともロシアよりは明るい感じである。南の島といえば、羽田を深夜に発つガルーダがあり、朝にはバリにつく。同じく深夜の羽田からはホノルルにも行ける。

が、バリにはジゴロがいるらしい。オッサンはジゴロには引っかからないだろうが、物売りやらボッタクリオヤジやらが跋扈している魑魅魍魎の地のようだ。しかも、バリへの直行便はガルーダだけなせいか、異様にチケットが高い。

一方、ホノルルいきの航空券市場には市場原理が働いているものの、ホノルルまで4日では日程的に厳しい。日付変更線の加減か、なんか損している気がする。4日にこだわる必要はないが、基本的にはキューバ旅行の妥協案であるから、長い休みを取るのであればキューバに行くべきなのだ。

なかなか場所が決まらない一方、僕は今年は初夏にイタリアで所用があった。所用といっても私用なので、散財するのみ。経済状況をふまえた上で近場のビーチを探すと、グアムあたりで妥協するのが良さそうに思えてきた。

しかも母親の実家を売却することになり、夏休みは手伝いでつぶれることになった。全て片付いたあたりで4日くらいグアムでダラダラしているのが妥当かもしれない。しかし旅行先としてグアムはイマイチ面白みがない。

なかなか決め手に欠く中、ふと気付くとマレーシアという国があった。島ではないが、南国のビーチがあって、ジゴロはいない。しかも深夜に羽田を出て、バンコクかシンガポールで乗り継げば効率的な日程を組める。

そんな思いつきで、5月半ばには、年内にマレーシアに行く計画になっていた。半年も先の話である。計画性がないようでいて、妙に計画的だ。

一方、不動産市況は流動的だった。夏休みに物置の雑物ガラクタを片付けようと思っていたのだが、夏前には買い手が見つかってしまった。結局、片付けを手伝う時間はなくて、引っ越し屋さんの梱包サービスを使うことになった。

そしてタナボタで夏休みが生まれた。自由すぎる喜び。
こういう時こそキューバに行くべきだ。

成り行き上、知り合いオッサンにキューバに行かないかと誘ってみたが、どうも休みは取れないらしい。しかもダメ押しのように「マレーシアに行くのを楽しみにしている」とのことである。他人をどうこう言えた義理ではないが、そんなに僕と旅をしたいのか。

期待を裏切るわけにはいかない。休みを無駄にするわけにもいかない。

泣く泣くキューバとマレーシアの両方に行くことにした。計画的であるようでいて、妙に計画性がない。自分の人生を見た気がした。