GWの大半を寝て過ごした後、5月は全体的に不調だった。実家の自室で在宅勤務をしていると、どうにも息苦しい。集中力はズタズタだし、何かをしようとする意思も乏しい。
一方、たまに会社へ行くと、その日は復活していた。気分的に快調だし、集中力もある。仕事もはかどる。じつは僕は会社が好きなのだろうか。
出不精なのに閉所恐怖症であり、ずっと自分の部屋にこもって、デスクごしに壁と向かい合っているのが良くなかった。と思いたい。そうでないと、禁断症状の出た社畜になってしまう。
2月の遊びのような福岡出張の後、社畜ではない筈の僕が、金曜日に無理をして天草へ行ったのには理由がある。雲仙温泉にクラシックなホテルがあり、土曜の夜は雲仙に泊まりたかったのだ。
天草から雲仙まで、島原を経由する直線距離で見ると近い。しかし天草は熊本県、島原・雲仙は長崎県。熊本県と長崎県の間には有明海がある。実際の移動としては、熊本から佐賀経由で長崎まで、ぐるっと陸路で回らないと駄目なのだろうか。
あまり真面目に過ごさなかった学生時代を思い出すと、僕の天草に関する唯一の知識は天草四郎である。いわゆる島原の乱だ。
中心人物が天草さんだけど、島原の乱。現代でも繋がりは深いのではないか。
Google Mapを眺めていると、天草の鬼池港から島原の口之津港までフェリーがあった。あとは天草側で鬼池まで行くバスを探し、長崎県側もバスで島原から雲仙まで行けば良い。
僕は海外でバスに乗ることに苦手意識を持っているが、日本でも土地勘のない場所だとバスは難しい。バス会社サイトやらGoogle Mapと格闘した結果、本数は多くなかったが、天草も島原・雲仙もバスがあった。
当日は晴天であり、島原の穏やかな海岸沿いが気持ち良かった。そういえば、天草から島原にかけて、確かにカトリック教会が多い。
雲仙温泉で一泊。九州でも冬の温泉は空いていて良い。
雲仙からは直通バスで長崎市に向かった。以前に九州へ行った時も長崎訪問を検討したが、その時は見送った。改めて調べ直したが、普通の観光地では満足できなくなっているので、やっぱり長崎市内には興味はない。しかも去年の台風で桟橋が壊れたとかで、軍艦島には上陸できなかった。
色々と調べていたところ、池島という島を見つけた。昔の炭坑の島である。ここに廃坑を見学できるツアーがあるらしい。
長崎駅前からバスを乗り継いで1時間半ほど。最初は住宅地が続くが、長崎漁港を過ぎたあたりから風景が一変した。海岸線に沿うようにして、高低差の激しい道が続く。風が強く、曇りがちな冬の日だったこともあり、前日の穏やかな島原の海岸線とは大違いだ。なんとなくスコットランド北部を思い出す。
バスで神ノ浦という街に着き、港まで歩いた。そこから30分ほどフェリーに乗ると池島である。
帰路は池島から佐世保まで高速艇に乗り、そこから特急で博多へ戻る。夕刻の高速艇は乗客3人だった。小雨の舞う荒れた海。ちょっとハードボイルドな気分である。佐世保に着くと「あまくさ」という海上自衛隊の船が岸壁に泊まっていた。なんとなく美しい旅の終わり方だ。
天草から佐世保に行ったのは3か月半くらい前のことだ。COVID-19騒動があったせいか、もっと前のことのように感じる。こうなる前の世界、ということだろう。
日本のオフィシャルな緊急事態は先週で終わり。とはいっても、患者が減った以外は実質的に何も変わっていないので、自由に出歩けるようになるのは先のことだろう。
社畜ではない僕のアイデンティティを早い時期に確認したい。