去年は重大な発見があった。香港における飲茶である。これについては以前に書いているので略すが、朝の時間を新聞とお茶と点心でノンビリ過ごすオッサン達の姿に感動したのだ。日本に飲茶の店は多くあれど、日本の飲茶店は点心を食べるだけの店になっている。ビールが出てくるのは進化と言ってもいいのだが、日本の飲茶店で、茶を飲みながら新聞をひたすら読み、その合間に他の常連客と話したり、思い出したように点心を食べるような独特な時間を過ごせる店は多くあるまい。
飲茶に続く未知の飲食空間を考えると、スペインのバルがある。日本にもスペイン料理店、特にスペイン・バルと称している店は多いが、本場のバルとはどんなもんなのか。これを確かめずにはいられない。ついでにバルは午前中からやっており、バル (bar) であるが故に朝から酒も出てくる。こういうのを一石二鳥というのか、毒を食らわば皿までというのか、今年の夏はスペインへ旅立つことにした。
スペインといえば治安の悪さである。なかでもマドリッドとバルセロナの悪評は、南アフリカのヨハネスブルクとケープタウンの比較のようである。マドリッドとバルセロナだと、バルセロナの方が比較的安全そうだ。バルセロナには首絞め強盗とか出ないらしいので (とはいうものの、夜のサグラダファミリアを見に行ったときに、芝居の下手な偽警官コンビには遭遇した)。
深夜に羽田を出るJALのパリ行きに乗ると、あれやこれやで11時頃にバルセロナに着いた。ホテルに荷物を預け、地下鉄の駅へ行った。とりあえず回数券を購入しよう。スリがいるかもしれないので周囲の人に財布を見られないようにと本には書いてあったが、財布を出さないと切符が買えない。地下鉄に乗るためには財布を出さなくてはならず、地下鉄に乗るとスリにあう確率が高くなる。それなら地下鉄に乗らなければいい。
しかし、そうするとホテルから出られなくなってしまう。意を決して財布を取り出して回数券を買い、街を歩くことにした。
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