ここのところ、毎日のように鼻血が出る。花粉症で鼻をこすりすぎているので、鼻の粘膜が傷ついてしまっているのだろうと思った。鼻の穴にオロナインを塗るのも手かと思ったが、ぼくの世界がオロナイン臭であふれてしまうと思い、耳鼻科に行ってきた。
病院に好き嫌いをつけるとすると、耳鼻科は嫌いな方に属する。そもそも耳鼻科の診察は原始的すぎる。そして拷問に近い。
・頭を椅子の背に固定させる。
・鼻あるいは耳の穴をこじ開ける。
・棒状のモノを穴から挿入する。
・アヤシゲな気体あるいは液体を注入する。
こういうことはジュネーブ条約で禁止されているのではないか。もっとも、今時、拷問の方が洗練されたテクニックを使っていると思う。裸で犬の真似をさせたり、便器の水を飲ませたり。
今日も耳鼻科は患者であふれていた。大体は子供である。ピーピー泣くのだ。やかましい。拷問前に意図的に恐怖心を植え付けられているようである。グアンタナモのようなことが、白昼堂々と都内で行われているのである。これが都知事選の争点にならなくて良いのか。
そして僕の番になった。椅子に座るように指示され、器具で鼻の穴をこじ開けられる。その後、鼻に棒を挿入されると、棒の中から液体のようなモノが噴出された。なされるがままである。拷問を止めるように説得しようとしたが、一瞬の隙に別の棒を挿入され、新たな液体を注入された。ぼくは抗議の意味を込め、一粒の涙を流した。
医者は花粉症で鼻の中にひどい炎症が起きているのだと言っていた。花粉症の薬と消炎剤を処方された。
こんなことになるのであれば、もっと早く耳鼻科に行くべきだった。もともと花粉症の薬は飲んでいたのだ。その薬が悪かったのか、非力だったのか、この有様である。妄想が暴走したあげく、ついにはオッサンなのに泣いてしまったではないか。
治療費を支払おうとすると、耳かきに来ていた乳児が人生の終わりのような声を上げていた。人生が始まったばかりの奴が絶望の深淵のような声を出すのである。やはり耳鼻科は嫌いだ。