なつ

やっと8月が終わった。

出勤時に勤務先のビルに入った後、夕方まで一歩もビルから出ない生活をしている。あまり夏の気温や湿度は関係ないし、そもそも今年は基本的に天候不順だったが、8月の終わりとともに夏も一段落な気がする。

昔から極度の暑がりのせいか、夏はキライである。それでも登山が趣味だったころは、カメラを持って北アルプスを目指していた。

いつの頃からか登山には興味を失い、ビールを持って海辺を目指すようになった。とは言うものの、体型的に水着では醜悪であり、実際のところはビールを求めて海辺の酒場を目指している。

しかし海辺の酒場に毎日行くわけにはいかず、基本的には街中の酒場で誤魔化さざるをえない。結局、それは普段と同じなので、キライな夏を乗り切るためには気晴らし的なイベントが必要である。

今年の夏は7年ぶりに隅田川の屋形船に乗った。前回と違うのはスカイツリーができたことで、浅草あたりまで行ってスカイツリーを眺める時間を取ってくれる。

その他にも、寿司屋で冷酒を片手にシンコを食べたり、普段は1人で行く蕎麦屋に知人をよんで日本酒を痛飲したり、近所の居酒屋の座敷でゴロゴロしながら濃いめのハイボールを飲んで泥酔したりと、とにかく酒ばかり飲んでいた。

子供の頃、夏休み中にはアイスを食べすぎないように釘を刺されたが、オッサンになって怠惰に酒を飲む夏を過ごしている。暴飲暴食こそ、戒められていた快楽である。

戒められていた快楽といえば、海辺で盛り上がる不純な恋というのをやってみたい。

しかし、それには生活習慣の見直しが必要である。外に出ることもなく、カロリーを蓄積する毎日。これでは腹が出たままで、水着が似合わないままだ。仮に水着が似合ったとしても、海辺にはクーラーがないし、日焼けも痛い。しかもサーフィン位できないとダメかもしれない。かなりハードルが高い。

海辺の不純な恋は諦めるしかない。やっぱり僕は夏がキライだ。

夏は終わったのだ。僕には冬がある。いまこそ冬に目を向けよう。

冬と言えばゲレンデの不純な恋を思い浮かべてみたが、体が硬いせいかスキーができないことを思い出した。スキーを履いてリフトから降りるだけで一大事だった。20年以上前の話である。しかもオッサンになったら寒いのもキライになってきた。

僕には冬もダメそうだ。

夏という暗闇の先にトンネルの出口を見たと思ったが、その先には別のトンネルがある。人生はトンネルだらけだ。