出勤すると夕方まで同じビルから一歩も出ない生活を送っている。適温な環境下で一日を無為に過ごしており、夏バテとは無縁の生活であると思っていた。
しかし気付くと気力と食欲をなくしていた。気力は失いがちな性格をしているものの、食欲は暴飲暴食の翌日くらいしか失われない。もしかして夏バテだろうか。
暑い日には辛いものを食べようと思い、街を彷徨っていると、近所に中華料理屋がオープンしていた。ピリリと山椒が効いている麻婆豆腐。これとビールさえあれば今年の夏は何とかなるのではないか。
そんなこんなで週二度の麻婆豆腐とビールで誤魔化していたが、ついに夏風邪をひいた。回復途上の弱っているときに限って友人が一時帰国しており、昼から寿司屋で冷酒を飲んだり、居酒屋の座敷で寝転がってコークハイを飲んだりしていた。
日本酒とコークハイの翌日、所用で証明写真を撮ったところ、顔が犯罪者のマグシッョトのようなことになっていた。もともと美少年というタイプではないが、二重化した顎が三重化しており、小顔とは言えない顔が更に巨大化していた。しかも瞼が腫れ上がっている。人相がひどく悪い。
体重には大した変化はなく、殴り合いをした記憶もなく、つまりは浮腫である。よくよく考えると日に2回くらいしか小用に行っていないのであった。
陽のあるうちの日本酒をやめ、居酒屋のコークハイもやめ、そして麻婆豆腐への依存を減らし、漢方薬を取り入れて生活改善を図ることにした。幸い中華料理屋には芸術的なチャーシュー麺があり、麻婆豆腐がなくても生きるよすがは失われていない。