イヤだイヤだと言いながらも、10年ほど同じ会社に勤務しており、リフレッシュ休暇をもらえることになった。
感謝の気持ちでリフレッシュしようと思い、おかんを旅行に誘ったところ、オリエント急行に乗りたいとのことだった。
急行といっても、新宿から箱根に行くのに、ロマンスカー代をケチって乗る急行ではない。小田急の急行みたいに、途中の駅から各駅停車になってしまうことはないが、一方で予約も特別料金も必要である。しかもドレスコードがある。極めてフォーマルな列車と言える。
フォーマルといえば、うちにはタキシードを着たスヌーピーがいる。彼らを連れて乗ろうではないか。
豪華列車といっても、おおよそ100年前の基準である。個室は狭くて二段ベッドだし、シャワーはないし、トイレは共用である。そもそもクーラーすらない。それでも食堂車が3両、バーが1両ついており、窓を開ければ涼しい風は入る。
ベネチアから列車に乗り、パリを通ってロンドンへ。約1日半の行程。ドーバー海峡以外は乗り換えもなく、途中に観光が入るわけでもなく、ひたすら移動している。極めて正しい列車の旅。
思い出したように写真を撮るほかは、ひたすら食べて飲む。ランチ、昼酒、アフタヌーンティー、ディナー、寝酒、朝食、ランチ、アフタヌーンティー。豪華料理ながら、ややブロイラーの気分になったところで、ロンドンに着いた。
ホテルにたどり着くと、すでに夕食の時間である。ホテルの隣にはバーガーキングがあり、迷うことなく店に入った。ケチャップとマヨネーズ、柔らかいだけのパン、ラードっぽい油で焼いた肉。非常に心が落ち着く。
今回の旅で、フォーマルで豪華なダンディ系ダメオッサンを目指そうかと思ったが、なかなか道は険しい。