じょうえつのおもいで

一昨年の夏に湯檜曽へ行った後、昨年は谷川岳の一ノ倉沢へ紅葉を見に行こうと思っていた。しかし、これが意外と難しい。

谷川岳ロープウェイで登った先にある天神峠の紅葉状況は、ロープウェイ会社が設置したライブカメラがあるので分かりやすい。しかし、標高的にロープウェイ起点と近い一ノ倉沢の状況は、イマイチ分かりにくい。しかも紅葉時期の谷川岳は異様に混むらしいので、多少なりとも空いていそうな平日に行きたい。ただし、こんな僕でも会社員なので、休むには仕事の予定を考慮せざるを得ない。

一ノ倉沢の入口である一ノ倉沢出合から見る谷川岳は、日中は逆光になってしまう。一方で曇って雲が垂れ込めると、谷川岳の岩壁が隠れてしまう。理想は高層に雲がある日なのだろうが、人生そこまで都合よくはない。毎日のように天気予報を見ているうち、紅葉シーズンは終わっていた。

旅行となると諦めが悪い僕が代替として考えたのが、清津峡トンネルの冬景色である。豪雪地帯なので、冬本番になるとトンネルの開口部が雪に覆われて、見通しが悪くなってしまう。理想は1月上旬までなのだろうか。ここも混雑を考えると平日に行きたい場所だ。

12月中旬になって、清津峡付近の天気予報を眺め始めた。なかなか日本海側が晴れる日は少ないが、たまたま金曜日に高気圧が本州上空を通り過ぎる日があった。前日は昼まで降雪、午後は曇りで気温が上がらないらしい。しかも気象庁の早期天候情報によると、年末には気温が平年よりも2度くらい上昇するようで、年内としては最後のチャンスになるだろう。

その日の会社スケジュールは空白であり、休むには絶妙なタイミングだった。問題は冬季に運行される、越後湯沢駅からの直行バスの運転日ではないことだが、お金で解決することにした。スキーシーズン直前ならば、人出が少なそうなのは悪くない。

そこまでして清津峡へ行ったところで、積雪が少なくて写真的に満足できない可能性もある。せっかくの晴れなので山の写真を撮りたいと思って調べたところ、谷川岳ロープウェイの観光営業の最終日だった。この日を最後に、スキー場としての営業になるらしい。ちょうど良い時間帯に越後湯沢から水上に抜ける上越線の電車があり、ローカル線でビールを片手に上越国境を越えるのも乙なものだろう。前日の帰宅途中に諸々の手配を済ませた。

当日は早朝の新幹線で越後湯沢へ向かった。晴れ予報の都内は曇りで心配だったが、大宮を過ぎると快晴である。越後湯沢で新幹線を降りて、タクシーで清津峡へ。

タクシー代を払ってまで清津峡へ行ったものの、山の斜面に薄い積雪はあったが、岩場や樹木には全く雪がなかった。つまり雪景色には早過ぎたのだ。これでは写真的に満足できないというよりも、写真的には想定外の事態である。思い起こせば、清津峡トンネルへ春に行った時には早過ぎて、残雪がトンネルからの景色を少々妨げていた。せっかちな割に諦めが悪い僕は、タイミングが読めないのだろう。

それでも谷川岳ロープウェイというバックアップがあったので、この日の諦めはついた。雪に覆われた八海山の遠景を眺めてから、へぎ蕎麦屋さんへ向かった。日本酒の八海山を片手に蕎麦タイム。八海山は見ると美しいが、飲むと美味しい。

越後湯沢駅で越後ビールを買って上越線に乗った。所々雪はあるが、風情を感じるような雪景色ではない。長いトンネルを抜けても雪国ではないのであれば、長いトンネルを戻っても雪国ではない。川端康成ですら、文学性を見出せないだろう。

ローカル線を水上駅で降りて、谷川岳ロープウェイへ向かった。ロープウェイの力なのか、自然の摂理なのか、標高に勝るものはない。快晴の天神峠からは、雪の谷川岳を見ることができた。結局、僕は谷川岳でしか満足できないオッサンなのかもしれない。

人生は都合よく出来てはいない。それに加え、僕はタイミングが読めない上に、諦めが悪い。それならば僕の人生にはバックアップの計画が極めて重要である。

旅のしおり:上越

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

上野 0742 (たにがわ471) > 越後湯沢 0858

清津峡トンネル
小嶋屋

越後湯沢1216 (上越線) > 水上 1256
水上 1320 (バス) > 谷川岳ロープウェイ 1340

谷川岳ヨッホ

谷川岳ロープウェイ 1612 (バス) > 上毛高原 1702
上毛高原 1613 (たにがわ412) > 上野 1715

旅のしおり:桂林

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

1日目

羽田 0920 (ANA923) > 広州 1350
広州空港 (空港送迎) > 広州南駅
広州南 1757 (中国国鉄G2950) > 陽朔 1946
陽朔駅 (送迎) > ヒルトン・ガーデン・イン桂林陽朔

宿泊:ヒルトン・ガーデン・イン桂林陽朔

1日目Tips
・広州空港から一番遠いターミナル駅が広州南駅。地下鉄だと1時間半くらいかかるらしいので、送迎車を手配しておいた。

2〜3日目

相公山景区 日の出
・桂林の川下り
・漓江くだり

夕食:
月鹿私房菜
・源園農家飯店

2〜3日目Tips
・色々と考えた結果、桂林と陽朔の間にある興坪に滞在した。20元札の風景画の元となった景色があり、短区間の川下りも楽しめる。
・興坪には古い街 (古鎮) もある。ここの古鎮に酒屋があって、米原料の白酒を売っていた。瓶熟成させたものと、キンモクセイで浸けたものを購入。土産物屋で売っているのとは違って小ロット生産だと思うのだが、かなり美味しい。

4日目

ヒルトン・ガーデン・イン桂林陽朔 (送迎) > 陽朔駅
陽朔 0824 (中国国鉄G2949) > 広州南 1023
広州南駅 (空港送迎) > 広州空港
広州 1505 (ANA924) > 羽田 2000

しんぴんのおもいで

旅行そのものと同程度に好きなのが、旅行の計画である。旅行計画の発端は思い付きが多いにも関わらず、写真撮影をメインにして、ほぼ完璧な旅行計画を立てる傾向にある。もちろん撮影は天候に左右されるが、雨季を避けて旅行計画を立てる上に、事前情報を収集して、ある程度の余裕を織り込んだ計画になる。友人から取材旅行と同等な休暇と言われる所以である。

ANAマイレージを利用した特典航空券の空席状況を元に決めた桂林旅行では、この地域ではメジャーな桂林市と陽朔市の間にある、興坪というマイナーな町に滞在した。そもそもCOVID-19後の中国の観光情報は未だに少ないが、マイナーな町に関する情報は極めて少ない。

興坪については限られた事前情報しか得られなかったが、この町は桂林から陽朔へのクルーズのハイライト区間にあたり、20元札の風景画が描かれた場所として有名らしい。この町を起点にしたショートクルーズもあるようなので、船旅を楽しめる。

あえて興坪に滞在した目的は、相公山から見る日の出だった。かなり美しいらしいのだが、具体的な情報は限られており、アクセスすら良く分からない。桂林市などからも中国語ツアーがあるようだが、地図を見ると最寄りの町が興坪なのである。

イマイチよく分からないままだったが、旅程の3泊すべてを興坪で宿泊する事にした。確証はなかったが、興坪だけ見れば桂林を満喫できる気がしたのだ。

よく分からないまま、すべてを託す。これを投資と考えれば愚の骨頂だが、航空券が無料なので、失敗しても失うものは少ない。と思う。

早朝に自力で相公山へ行くのは困難そうだったので、ホテルに問い合わせを入れたところ、ツアーデスクを請け負っている会社を紹介してもらった。そこに問い合わせてみると、サンライズツアーの手配は可能らしい。その他、諸々の相談にも乗ってくれたので、情報収集の面でも助かった。

桂林に3泊するものの、スケジュール的に日の出を見られるのは2回しかない。撮影メインの旅なので、2日とも日の出ツアーを予約した。平日に起きるのは困難だが、旅行であれば早起きができる。

前日にWeChatでツアー会社から連絡が来た。集合場所までは15分ほど歩いていく必要があった。小舟で川を渡ってからの陸上移動なので、この方が無駄な出費も避けられるのだろう。

集合時間は朝5時との事である。対岸の村が運営する渡船に乗せてもらい、そこから車で相公山へ向かった。相公山では、ドライバーはチケット売り場近くの駐車場で待機しているとの事。ガイドではないと言う事なのだろうが、チケットは指差しとAlipayで買えるので、この方が気楽で良い。

ただし気楽なのも、ここだけだった。

相公山のビューポイントへは、急坂を階段で登っていく必要があった。iPhoneによると20階相当である。苦労して階段を上がったところ、ビューポイントは異様に混んでいた。なんとか3列目くらいに場所が取れたが、撮影条件としては悪い。しかも雲が多く、幻想的と言えば幻想的だが、極めて不完全燃焼だった。

ふてくされ気味に山を降りて車に戻った。興坪までの船着き場に戻る途中、ちょうど見晴らしの良い所で太陽が出てきた。僕の不機嫌さを察したのか、そこで止まってくれたので、思いがけず良い写真を撮ることができた。

おかげで気分も持ち直し、ホテルに戻って仮眠、昼過ぎに起きた。興坪には古鎮 (古い街) があり、歴史的な建造物がカフェや商店になっている。そんなカフェの一軒で軽く食事をした。

街を歩いていると、渡船乗場の横に、観光ボートのターミナルがあった。いくつかコースがあるようだったが、どれにすべきか良く分からない。人気がありそうな90分くらいのツアーに参加した。ここでも指差しとAlipayでチケットが買えると思ったが、意外なことにAlipayが使えなかった。指差しとAlipayでダメなら、翻訳アプリとクレジットカードである。航空会社のマイルを使ったとしても無料チケットを手に入れるのは難しいが、有料であれば基本的に何とかなる。

天候は既に回復して快晴だった。窓が開かない船だったのでイマイチかと思ったが、帰路は屋根上の展望デッキに乗せてくれた。かなりの壮観である。

観光ボートを降りると、そろそろ夕方だった。この町で2つ目のメインとなる日没の撮影に向かった。20元札の裏に描かれた風景画のモデルとなった場所である。自称「風景画のモデル地点」が数か所あったが、写真撮影に適した場所を見付けることができた。西向きに撮影するので、夕景が美しい。

翌朝も早朝から相公山である。前日が混みすぎていたので早めにして欲しいとリクエストしていたが、結局のところ渡船のスケジュールに縛られるので、あまり意味はなかった。この日の渡船は前日の半分程度の乗客数。そういえば前日は日曜日だった。

相公山の人出も半分程度で、前日に目を付けておいた場所の最前列を確保できた。最前列だと柵を三脚代わりに使えるので、シャッタースピードが遅くても問題ない。この日は快晴で、日の出前の朝焼けから、太陽が顔を出す所まで楽しむことができた。

事前に調べたところ、興坪には筏船もあるらしい。現地にはチケット売りが何人もいたが、どれに乗れば良いのか分からず、ツアーデスクにチケットを依頼した。乗船時間を指定できたので、最も遅い時間にした。ちょうどサンセットになる時間帯である。

筏船の運航は別の村の権益なのか、ホテルから乗船場所までが遠い。それでも筏は水面が近く、昨日の観光ボートより迫力があって良い。ちょうど20元札の風景画に近い場所で夕焼けになった。

限られた情報だけで行った興坪では、結果的に極めて満足できた。たぶん桂林市に行って、普通の観光ルートを辿るよりも楽しめたと思う。

ほぼ賭けに等しい選択だったので、航空券を普通に買っていたら、ここまでのリスクは取らなかったかもしれない。タダより高いものはないと言うが、タダより安いものもない。