とやまのおもいで

6月上旬にニュース記事を読んでいたところ、立山アルペンルートの室堂にある「みくりが池」の解氷が始まり、池がブルーになっているとのこと。その時は大して何も思わなかったが、数日後、妻が会社を休んで友達と鎌倉に出かけると聞いた。特に論理的な相関性は見い出せないが、それならば僕も会社を休むべきではないだろうか。

梅雨入り直前、木曜日~金曜日にかけて高気圧が日本列島を通過するタイミングがあった。会社の日程を見たところ、その金曜日は在宅勤務を予定しており、休んだところで影響は少なそうだった。この高気圧の影響は、富山県では木曜日の夕方がベストなようで、金曜日の午前中には東北の太平洋側に抜けてしまう模様。それでも低気圧も梅雨前線も離れた位置にあるので、気象条件としては悪くなさそうだった。

妻の行動と自分の予定には論理的な相関性はないが、それでも自分の行動だけを論理的に振り返ったところ、前月に会社を休んで群馬新潟に行っており、迷いが生じた。こういう時は自分で判断しないに限る。ダメ元で電話してみたところ、前日にも関わらず、富山市内にある寿司屋さんの予約が取れた。これは富山の神様が来いと言っているのだろう。後悔は先に立たないので、思い切って行くことにした。もはや理論の世界ではない。

東京駅から朝一番の北陸新幹線に乗車して、長野駅からバスで扇沢へ向かった。ライブカメラで見る室堂は快晴だった。脇目もふらず、扇沢から室堂を目指した。長野県方面を見下ろせる最後のポイントである大観峰でも、多少の雲はあったものの、概ね晴れていた。

そこから電気バスに乗り、立山をトンネルで潜り抜けて、本州の日本海側に入った。東京駅から4時間半かけて室堂に着いてみると、無情にも曇天だった。太陽は雲の中であり、みくりが池のブルーも、期待した程の色彩には見えない。

それでも立山連峰の稜線が見えているだけマシだろう。ベンチでカメラを取り出していると、グーグーと奇妙な音がした。奇声を発している観光客かと半ば呆れて見てみると、それは雷鳥だった。呆れるべきなのは僕自身である。

その後も散歩を続けたが、本当に特別天然記念物に指定されているのかと思う程、何羽も雷鳥を見ることができた。衣替えの時期なのか、毛色のパターンも複数あって面白い。

しばらくすると雲が薄くなり、日もさしてきた。みくりが池に急いで戻ると、太陽光にブルーの氷解水が映えていた。奇跡的な一瞬があって、池の波が止み、水面に立山が映った。

時間が許す限り絶景を堪能し、富山市へ向かった。

寿司屋さんは美味しく、ベロベロになる手前で富山駅に戻った。最後に押し寿司を購入して、新幹線ホームへ向かった。その日の全てが完璧ではないかと内心では自画自賛していたのだが、新幹線を乗り間違えてしまった。酔っ払っていたので、とりあえず来た列車に飛び乗ったら、一本前の新幹線だったのだ。

そういう時に限って、ほぼ全駅に止まる列車なのは必然と言うべきだろう。予約していた列車には途中駅で抜かれてしまい、帰宅が遅くなってしまった。それでも誤乗車した新幹線で座って帰れたので良しとすべきだろう。全てが完璧とはいかなかったが、大成功と言える一日だった。

結局のところ、条件が揃えば、悩まずに行動する方が賢明なのだろう。後悔は先には立たないのだから。

旅のしおり:立山アルペンルート

東京 0616 (かがやき501) > 長野 0736
長野駅東口 0750 (バス) > 扇沢 0925
扇沢 0930 (電気バス) > 黒部ダム 0946
黒部湖 1010 (ケーブルカー) > 黒部平 1015
黒部平 1030 (ロープウェイ) > 大観峰 1037
大観峰 1045 (電気バス) > 室堂 1055

・室堂

室堂 1420 (バス) > 美女平 1510
美女平 1540 (ケーブルカー) > 立山 1547
立山 1603 (電車)> 富山 1700

夕食:寿司栄掛尾店

富山 1940 (かがやき516・・・には乗れなかった) > 東京 2156

Tips
・室堂は富山県にあるので、富山周りの方が早く着くと思いきや、長野から信濃大町をまわった方が1時間くらい早く着けると判明。そもそも東京から信濃大町へは松本経由の大糸線で行く場所だと思い込んでいたが、いまや新幹線を活用して長野からバスで行く場所らしい。

えちごゆざわのおもいで

5月で二回目となる横川へ行った際、その週に谷川岳・一ノ倉沢までトレッキングするのは道路閉鎖により不可能だと教えられたが、既に金曜日の休みを取っていた。谷川岳ロープウェイだけでも行ってみようかと思ったが、それだけでは旅行として少し物足りない。しかもライブカメラを見たところ、5月ともなれば残雪が少なく、かなり想像と異なっていた。谷川岳の残雪を見ようと思った昨年の時点で、リサーチ不足だった可能性が高い。

会社の休みはキャンセルできるが、僕の気分は三連休であり、既に金曜日に出社する気力は失われていた。どこかに出かけようと思って地図を眺めていたところ、新潟県の清津峡トンネルに行ってみたかったことを思い出した。

上越の里山は新緑の時期だろう。まだ夏のピークシーズン前であり、平日ならば、そこまで混んでいないと思われた。

東京駅から上越新幹線に乗って越後湯沢へ向かった。人が最も少ないと思われる、開館直後の時間帯に行きたかったので、行きは越後湯沢駅からタクシーを利用した。そもそも1本目の下り新幹線と、1日に数往復しかない地元の路線バスは、10分差くらいで接続していない。関東から公共交通機関利用での日帰りは、かなり厳しい場所である。

青空の下、新緑が眩しい。渓谷の川沿いには野生の花が咲いていた。トンネルの最奥部には水を張ってあるのだが、青空と谷が水面に映えている。想定通りの人出で、ゆっくり撮影できた。

しかし谷には残雪があり、日陰となる隅の方の景色を少々ブロックしていた。時期的に少し早過ぎたのだろう。ゴールデンウィーク後1回目の横川訪問ではリサーチ不足で失敗したが、上越国境をこえて新潟県に来てもリサーチ不足ではないだろうか。

残雪といっても、枝葉が落ちており、もはや茶色い物体と化していた。最初は気にならなかったが、何枚も撮っているうちに気になってしまう。LightroomでRAWファイルを処理する時にAI補正するしかない。

さすがに帰りもタクシーというわけにはいかず、ゆっくりと時間調整して、路線バスで越後湯沢に戻った。乗客は他に3人だけ。全員が清津峡トンネル最寄りのバス停から乗ったので、往路は僕と同じ運命だったのだろう。

このまま自宅に戻っても良かったのだが、近隣の六日町にカタクリの群生地があるとのことで、花を見に行った。5月中旬くらいが見頃だと読んだ気がしたのだが、もはやカタクリは跡形もなかった。実際、その日は立ち入り規制のロープを地元の人が片付けていた。六日町駅から結構な距離を歩いたが、無意味に終わってしまった。結局のところリサーチ不足であり、失敗から学んでいないのは明白である。

猿も木から落ちる。木から落ちた猿は、その後で何かを学ぶに違いない。そうでなければ厳しい野生の世界で生きてはいけないだろう。

人類としての僕は、知的には猿より進化している筈だ。内容のレベルはともかくブログを書いているし、掛け算程度の算数も出来る。どちらも猿には到達不可能な能力である。

そうとは言うものの、木から落ちても、実は大して学んでいないように思われる。これでも猿より本質的に賢いと言えるのだろうか。

人類の一員としての尊厳に疑問を感じつつ、新幹線で上越名物の笹団子を食べながら帰った。その疑問への回答はどうあれ、新幹線に乗れるのも、笹団子を食べられるのも、人類の特権である。

人類で良かった。

旅のしおり:越後湯沢

記載の時刻等は訪問時のダイヤです。

東京 0608 (とき310) > 越後湯沢 0722
越後湯沢駅 (タクシー) > 清津峡トンネル

清津峡トンネル

清津峡入口 1212 (バス) > 越後湯沢駅前 1240

越後湯沢 1314 (JR) > 六日町 1336

飯綱山

六日町駅前 (バス) > 塩沢郵便局前

塩沢宿

塩沢 1631 (JR) > 越後湯沢 1649
越後湯沢 1708 (たにがわ86) > 上野 1814

ぐんまのおもいで

昨年の夏、湯檜曽温泉に宿泊し、谷川岳ロープウェイに乗って天神平でトレッキングをしたが、肝心の谷川岳は雲の奥に霞んでいた。どうやら紅葉の秋は混むらしいので、残雪のある時期に再訪しようと思っていた。

ロープウェイに乗って間近で谷川岳を見るのも悪くないが、一の倉沢までトレッキングすると谷川岳の雄大な岩壁を見られて絶景らしい。ただし冬季は道路が閉鎖となり、一の倉沢の入口である、一ノ倉沢出合まで行けるのは5月下旬くらいからのようである。ちょうど五月晴れの時期ではないだろうか。

ゴールデンウィークのメキシコ旅行から帰った後、ネットを見ていたところ、横川の鉄道保存施設に展示されている国鉄のEF58が塗装工事をしたとのこと。屋外展示なので汚れやすく、塗装が美しいうちに撮影しておきたい。横川も谷川岳も同じ群馬県内であり、オッサンの日帰り遠足としては悪くない計画になった。

それから毎日のように群馬県の天気予報を見続けていた。今年は梅雨前線の北上が早かったのか、どうにも天気が悪い。やっと5月中旬に晴れそうな日を一日だけ見つけたが、その日ですら一日中ずっと晴れるわけではなさそうである。このまま5月後半まで待っても天候が好転しない可能性を考慮して、まずは横川だけ行くことにした。

その晴れそうだった日は火曜日である。月曜に仕事を片付けてしまえば、さほど会社も忙しくないタイミングだった。起床時間を考えると高崎まで新幹線利用が望ましいが、混雑した電車には乗れない閉所恐怖症オッサンなので、平日の通勤電車は早朝に限る。横浜から初電の東海道線グリーン車に乗り、延々と各駅停車で高崎まで向かった。

高崎で信越線に乗り換えて横川に着くと、なんと鉄道保存施設は休館日だった。たしかに横川名物の釜めし荻野屋本店が火曜定休なのは把握していた。国道沿いの店舗も同じく火曜定休なので不思議に思っていたが、やっと理由が分かった気がした。世界が自分中心に動いているわけではないことに気付いたが、もう既に手遅れである。これ以上の被害を食い止めるべく、脇目もふらず高崎から新幹線で帰京し、急きょ午後から在宅勤務した。

その後も天気が良くない日々が続いたが、翌週になると、水曜と金曜は好天の予報だった。どちらも晴れるのは午前中くらいまでなので、結局のところ横川と谷川岳は日程を分ける必要があった。その金曜日に一の倉沢出合までのトレッキング道路が再開予定との事だったので、水曜日に改めて横川へ行く事にした。

そこから先は基本的に前週と同じである。それでも2回目にして満足のいく写真が撮れたし、荻野屋本店で釜めしも食べられた。

さすがの僕も学ぶのだろう。帰りの電車の待ち時間に、みなかみ町の観光案内に電話してみた。優しそうな声の女性に、雪崩の可能性があり、トレッキング道路の通行規制解除は延期になったとの冷酷な現実を教えられた。

結局のところ、世界が自分中心に動いているわけではない事を群馬で学んだ。

旅のしおり:横川

記載の時刻は訪問時のダイヤです。

横浜 0525 > 高崎 0750
高崎 0804 > 横川 0837

碓氷峠鉄道文化むら
・釜めし荻野屋本店

横川 1110 > 高崎 1141
高崎 1152 > 横浜 1413